紫式部を生きた、1年5か月の凝縮された時間に

──撮影を通して紫式部の人生を生きたことで、新たな発見はあった?

「紫式部は、たぶん日本で一番有名な女性作家ですけど、本名も、正確な生年月日もわからないし、本当の彼女のことは誰も知らないというのが、まず不思議でした」

 平安時代は、いまでいう戸籍のようなものはなく、特に女性は本名を公表しないのが普通。『光る君へ』では、吉高が演じた「まひろ」が中宮・彰子の女房として出仕したときに、「藤式部」と命名される。

「でも、わからないからこそ、逆に物語の余白をつくれる作品になったのではないかと思います。パープルちゃん(吉高がつけた紫式部のニックネーム)と藤原道長の恋なんて、あったかどうかは本人たちに聞かないとわからない。なにしろ1000年も前のことだから」

 平安時代を生きる主人公を演じるにあたって、日本の歴史を改めて勉強し直し、驚くこともたくさんあったという。

「当時のリアルを知ると、雅で美しいだけの時代じゃなくて、痛々しかったり、オカルト的なことが普通に行われていたりするんですよね」