「エリックサウス」オープン初日の衝撃
稲田「会社の人間には、カレーの名店がいっぱいあるんだから差別化しないと、とか言っていたんですが、単に自分がやってみたかった、というところもありました」
稲田さんにとっても、一種の賭け。そして2011年に「エリックサウス八重洲店」がオープンする。いざ、フタを開けてみると……。
稲田「オープン初日から、いわゆるインド料理マニアといわれる人たちが、開店前に行列を作っていたんですよ。うちの幹部スタッフも、“なんでいきなり列ができるんだ”って、ざわつきましてね。そこでようやく世の中、特に東京には目ぼしいコンテンツがあれば、遠くからでも来てくれる熱量の高い人たちがいるんだと、稲田はそういう人たちを満足させることで激戦区を生き残ろうとしているんだと、やっと彼らも理解してくれたんです」
しかし、まだ稲田さんの目標は達成されていなかった。
稲田「お客様は近隣のワーカーが8割ですから、出たメニューも8割がいわゆる普通のカレーなんですよ。ミールスやビリヤニは2割でした。ただ、ある時から、専門的なインド料理の割合が多くなって、普通のカレーを抜いたんですよ。そこでようやく、当初の目論見を果たしたという実感がありましたね」
そこに至るまで約3年。どうやって南インド料理は浸透していったのだろうか。