一方的に田村さんの居住まいを見ていた
――ではかなり濃い関係性でしたね。
「植木等さんや森繁久彌さんといった、錚々たるスターの方々がゲストで出てくださったのですが、田村さんはレギュラーだったので、毎週顔を合わせていました。同じシーンでの共演もたくさんありましたが、そこで“もっとこうしたほうがいいよ”といったことは、一度も言われたことがありません」

――そうなんですね。
「田村さんの居住まいを一方的に見ていました。当時はスマホなんかで田村さんのことを調べたりもできませんでしたしね。あるとき、撮影が終わって打ち上げがありました。でも僕は打ち上げとかって好きじゃないんです。なんていうか、形だけの儀式っぽい感じがして」
――普段から、共演者やスタッフの方とフランクなお付き合いをしたりといったことは。
「すごく冷めている部分があって、“打ち上げってどういう意味があるの?”と思っちゃうんです(苦笑)。どうも苦手で。そのときもナショナル劇場という大きな枠ですから、打ち上げ会場もすごく大きくて。ドラマ撮影の現場にはいなかった知らない方たちもたくさん。というか、半分以上が知らない人たちでした」
――そういうものかもしれません。
「撮影の打ち上げだといっているのに、会場にいるのは、現場で汗水流して働いていた知っている顔ではないんですよね。そのこともなにか不思議だなと思いながら、会場に入りづらくて。中にいるスーツを着ている方々も、本来なら挨拶もしたかったでしょうけれど・・・。なにしろ僕は主役だったわけですし。分かってはいましたが、どうにも入れずに会場の外で、90年代でしたし、タバコを吸っていました。すると田村さんがやってきたんです」