“レモンハート40周年か、そりゃ気温も5度上がるな”との声も
山内「日本酒の世界を見ていると、後継者不足や経営難で経営譲渡する酒蔵が増えてきて。歴史は100年あっても、ここ数年で経営者が変わったという酒蔵が増えているんです。つまりそれは現在、日本酒は新規の免許がなかなかおりないため、酒蔵をやりたい人たちは既存の蔵から免許を買わなければならないのです。
 そういった新規参入者への経営譲渡の流れは、年々増えていると感じています。それだけ日本酒事業に魅力を感じている企業が多いからだと思いますし、経営者が変わって酒がよくなるケースって多いんです。資本力があるためしっかりした設備を導入できるので、衛生面もよくなり品質も向上するケースが目立ちます。そういった蔵の経営や味を心機一転した日本酒がどんどん出てきました」
そのため今後は、「家業として酒を造る酒蔵が減るのではないか」(山内)という。
山内「この先、経営譲渡の流れはますます増えていくので、企業然とした酒蔵も多くなっていくと予感しています。長い間、国税庁に守られていた古い体質の日本酒業がようやく変わり、これからはどんどん異業種の新しい人たちが日本酒の世界に入り、新陳代謝が進んでいくと思います。
 そういったイノベーションは悪いことではありません。でも、その一方で家族で造るとか、地域の人たちだけで造っているような、家業として代々日本酒を造る酒蔵は今後かなり減っていくのでは、とも思っていて、それはちょっと寂しいですね。そういう日本酒は、いくら設備をよくしていい酒を造ろうと努力しても決して手に入らない、その土地ならではの気質を持った地酒ができますから。そういう地酒はあと10年でガクッと減ることを考えると、ますます寂しいですね……なんて、日本酒のことになると真面目でマジになっちゃうのついお堅い話になってしまいました(笑)、陸さん何か楽しいCHANGEネタをお願いします(笑)」
陸「そうですね。ちょうどSNSに“レモンハート40周年か、そりゃ気温も5度上がるな”というポストを見たんです。というのも、漫画の中に“30度超える猛暑日が続いた”というコマがありまして、もはやいまはそれどころではないという“時代の変化”を感じまして。『BARレモン・ハート』には、そういった時事的なネタがちょこちょこ含まれているので、40周年記念コミックスでそんなことも感じ取ってもらえたら楽しいと思います」
古谷陸(ふるや・りく)
1990年9月13日生まれ。幼少期より祖父・古谷三敏の代表作『BARレモン・ハート』に影響を受け、学生時代からお酒の歴史や文化を学ぶ。高校・専門学校在学中にバンド「ゴールデンボンバー」のローディーとして「鶏和酢里紅」としても活動。2015年より東京・大泉学園の『BARレモン・ハート』を継承。現在は古谷敏三作品の管理を行いながら、バーテンダー、ブランドプロデューサーとして活動中。
山内聖子(やまうち・きよこ)
1980年生まれ、岩手県出身。呑む文筆家、きき(※漢字変換お願いします)酒師。22歳のときに飲んだひと口の日本酒がきっかけで魅力に開眼しライターの道へ。2011年より週1度、日本酒バー「后バー有楽」のママを務める。著書に『蔵を継ぐ』(双葉文庫)、『いつも、日本酒のことばかり。』『夜ふけの酒評 愛と独断の日本酒厳選50』『日本酒呑んで旅ゆけば』(3冊共にイースト・プレス)、新刊に『酒どころを旅する』(イカロス出版)。
    

