人生に影響を与えた大きな出来事“プロレス実況”

「勉強机に座りながら、文化放送で流れていた、みのもんたさんのラジオ番組『セイ!ヤング』にかじりついてばかりいました。でも、自分がしゃべり手になるなんて当時は思ってもいませんでした。僕はいつも、“人生は予告編と結果論”だと言っているのですが、今思えばみのさんのラジオを聞いていたことも、その後、自分がアナウンサーという職業に就くことを思えば人生の予告編だったわけです。そして高校のときに、僕の人生に影響を与えた、大きな出来事がありました」

 それは、立教高等学校(現:立教新座高等学校)時代の学友たちを前にした「プロレス実況」である。

「プロレス好きの仲間が集まって、プロレス興行の真似事みたいなことをしていました。学生プロレスのノリですね。身体がゴツくてプロレスの強いヤツがレスラー役で、僕が興行主&実況をやって、学校の中庭でまくしたてていたらすごくウケたんです。幼いころから忸怩たる思いがあって、青春期も手伝って、みうらじゅんさんの言葉で言う“青春ノイローゼ”だったのが、高校2年ぐらいのときの実況でいきなり爆発した。“お前の喋り面白いなあ”“お前の実況で盛り上がってるからなあ”なんて言われて。毎日昼休みにやるんです。“この芝の上、平安の極みの空間を血で染めるのか!”とか言ってね」

古舘伊知郎 撮影/河村正和