歴史的考証もふまえた演じ方「ギャップが現代においてはこの役の面白さに」
「『忠臣蔵』という作品において、内蔵助も浅野内匠頭も吉良上野介も横並びでキャストの1人として登場しますけど、実際には吉良は、足利氏の孫 清和源氏の流れをくむ、室町幕府将軍という大変な家柄な人間で徳川幕府に於いて儀式や典礼を司り、大名に対し、礼儀作法を指南する立場の高家。石高は四千石にとどまるものの従四位上という高官。その中で、いわゆる“刃傷沙汰”が起きる。
若者は年寄りに反抗したいもので、それはいつの世もそういうものだとは思いますが、新しいものばかりがいいとは限らない。時間をかけて作り上げてきた伝統というものもあるわけで、あそこで吉良に刃を向けるなんて言うのは何がどうあろうとあってはならないことなんですよね。
本来の関係性や双方の真実を置き去りに悪役としてと描かれてしまっている中で、“吉良上野介の存在はそんな単純なものじゃないぞ”という考証もされている。その事実と作品の中でのギャップが、現代においてはこの役の面白さになってくるんじゃないか、と思ったんですよね」
近年では、吉良上野介をただの「悪」とは捉えない見方も増えている。一方で、徹底した「悪」として描くエンターテインメントとしての楽しさもある、その両面を持ち合わせている役だ、という。