いま、歌舞伎界でもっとも注目されているといっても過言ではない女方がいる。中村米吉さんだ。昨年10月に『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)に初出演すると、その可愛らしい顔立ちと話し方が話題となり、「米吉さん」というワードがツイッター(現・X)トレンド入りしたほど。さらに”喋りすぎる女方”の異名を持ち、SNSのライブ配信や単独トークショーを行い、やわらかで上品な語り口からこぼれる少々の毒っ気が、ファンを沼に誘っている。そんな米吉さんの「THE CHANGE」とは。【第2回/全5回】

中村米吉 撮影/松野葉子

「かわいすぎる女方」として大注目の若手歌舞伎役者、五代目中村米吉さんに「変わる、チェンジ」という言葉から思い浮かぶことをたずねると、「チェンジって……オバマ大統領?」とおどけつつも、「やっぱり、お客さまの前に出たときですかね」と話し始めた。

「顔をしている(※お化粧をする)ときは、その役の顔にはなってるんですけど、まだ“自分”ですね。基本的に、袖から舞台に出るまでは自分じゃないかな。変わるって意味では、やっぱり顔をして、衣装をつけて、頭にカツラをつけて。それでもやっぱり見た目が変わっているだけだから、全部済んでお客さまの前に出た瞬間が“変わるな”って思いますね」

 現在30歳の米吉さんは、23年7月に人間国宝に認定された五代目中村歌六の長男として生まれ、本格的に歌舞伎の道を歩み始めたのは、大学入学後のことだった。

「多くの歌舞伎役者は、子どものころに初舞台を踏みます。私もそうでしたが、子役としてはあまり出ていませんでした。親が学業を優先してくれていたんでしょうね」