女方を始めた当初は「右も左もわからない環境で」

「元々、こんなぼんやりした顔をしていますからね。隈取を取って目を剥いたってしょうがないな、という思いもあったから。それで女方を選んだことは、今思えば……大バクチでしたけどね」

ーーなぜ、大バクチなのでしょうか。

「18歳まで、女方として稽古をしてきたわけではなかったので。それに、父も主に立役だし、私が生まれる前から父のところにずっといる蝶八郎さんというお弟子さんがいるんですが、彼も立役。私自身も、周囲も右も左もわからない環境で。だから最初のうちは、曽祖父のお弟子さんであった時蝶さんを頼りながらでした。ですが、高齢でしたし常に側にいてくれる状態でもなく、本当に手探り状態だったんです」

 丸腰のまま歩むこととなった、女方の道。米吉さんは、あらゆる家のお弟子さんや先輩たちに教えを請うた。

「“こういうときはどうするんですか?”、“ああ、こうしなきゃいけないですよ”など、その都度言われながら、もみくちゃにされながら覚えていきました」