今作の演出・宮本亞門がきっかけだった芸能界復帰「“実は復帰を考えているんです”と…」
──そこから、『サド侯爵夫人』に作品が決まるまで、どんな経緯がありましたか?
「その場で“実は復帰を考えているんです”という話をしたら、後日、食事に誘っていただきました。亞門さんが“いまどういう作品に興味があるの?”、“何が面白いと思う?”と、僕の考えをさまざまな面から吸い上げてくれました。そうしてオファーをいただいたのが、この『サド侯爵夫人』でした。あとで聞いた話ですが、亞門さんは僕がお断りすると思っていたみたいで、僕が“やります”って即決したから、すごくびっくりしたと聞きました」
──舞台への出演は2014年の『太陽2068』以来12年ぶりですが、期間が空いたことへの不安はないのでしょうか。
「久しぶりに演じるには、少しハードルが高いのではないか、とは素直に思いました。でも、これから俳優としてどのように生きていくかを考えたときに、このような、“自分を破壊するような作品に、立ち向かう姿勢を見せたい”という思いが強くあったので、いまは覚悟を決めています」
──“自分を破壊する”というのは?
「ルネという役は、いまの僕が持っている演技の物差しがまったく当てはまらない、と思っています。だから、これまで自分が培ってきた常識、技術など、もしかしたら怖さや恥じらいのような感情も全部含めて、一度壊す必要があります。組んできた積み木を全部壊して、まったく新しい形をいま一度構築していく、という感覚です。自分が裸になるような怖さもありますが、そのようなドキドキする感覚も好きなんです。まさに役者の魅力のひとつですね」