主役を張ったとしても役者が育たない現状「3か月では難しい。1クールでは目にも止まらぬ早さで流れてしまう」

ーーそういった変化は、声優さんにどんな影響を及ぼしますか?

「1クールものは、いくら主役を張ったとしても、なかなか役者が育たないんです。1年やってやっと何かが見えてくるというものなのに、3か月では、なかなか難しいですね。ただ、脇役だったとしても、いい役どころをつかんで、力を発揮している人もいらっしゃるので、一概には言えませんが。基本的に役者の仕事は“気持ちを伝えること”ですが、1年くらいでようやくそれがつかめるようになり、その役とともに泣いたり笑ったり、いろんなことを乗り越えて、ようやく自信がついてくるもの。同時に、観ている方も『あの役をやっていた人か』と認識してくれるんです。1クールでは目にも止まらぬ早さで流れてしまいます」

ーー毎クール、多くの新作アニメが発表されていますもんね。

「いくら“覇権アニメ(ある特定の期間、クールや年間で最も商業的な成功を収め、圧倒的な人気を誇った作品)”といわれても一瞬で通りすぎてしまう。役者が役とともに成長して何かをつかむことが、環境的に難しくなっているんです」

ーー難しい現状で、打開策はありますか?

「時代の流れを変えることは私にはできないので、チャンスが来たとき、そのときにいい仕事ができるかどうか、そのために準備をしておくしかないですよね。単なる受け身では、同じような人がたくさんいるので埋もれてしまうし、“個性とはなにか”に開眼する前に歳を重ねてしまったら、フレッシュな若い人に取って代わられてしまう。そうならないために、準備をしておくんです」

 三石さんは「100の言葉よりも、板を踏んだこと」で生き残れているという。

「つまり、役者として舞台に立つことです」

ーー三石さん自身も、勝田声優学院を卒業後、同期の声優と劇団を結成して舞台経験を重ねてきた。今までも、さまざまな舞台に出演している。

「長く劇団で活動してきたので、ひとつの作品を長い時間かけて稽古して、お客さんの前で生でやることの怖さは身にしみています。みんなと最後まで力を合わせ、幕を下ろすことができたときに感じる気持ちの尊さや、お客さんに拍手をいただいたときの喜び、そして、同じお芝居でもお客さんが違えば反応が全然ちがうこともある、というお芝居の奥深さを実感できたのが私は舞台だったんです。その集中力と緊張感は体験してみないと分からないです」

 そういった舞台経験が、アフレコの現場でも生きているという。

「私の場合はそう。でも舞台経験なくても達者な方もいるし、いろんな考えがあると思います。スタジオでのお芝居は瞬発力が勝負。お話の流れや、周りの人との掛け合いによって、同じ文言でも人によってしゃべるニュアンスが変わっていくものです。そこがたまらなく面白い。いまは同じような感じというか『このセリフはこう』という杓子定規というか……。特に気になるのは距離感かな。物理的距離、心理的距離、わかっているようでも伝わらないとね」