セーラームーンでご一緒した先輩のありがたい言葉「私を指さして“彼女はね、自分の仕事をちゃんとやっている”と」
ーー三石さんがアドバイスを送ることはありますか?
「劇団とスタジオは違うので、よっぽど長く一緒にやっていないと言えないですが……これはちょっとなあ……! と思ったときは『ごめんね、先輩風ビュービュー吹かせちゃうんだけど!』と言いながら伝えることもあります(笑)」
ーーいい入り方ですね!
「私にとっては違和感があるお芝居でも、演出的にはOKかもしれないし、その人を迷わせてしまうかもしれない。そういうときは『余計なことをしてしまった!』と悩みます。それでも、その役者さんが好きだったら、伝えちゃっています。そのほうが絶対に面白くなると思うんです。お客さんが観て面白くなかったら“終わる”と思っていますから。
そもそも、たった30分のお話でも、企画会議を重ねて、脚本家さんたちが何度も書いては直してを繰り返し、アニメーターが絵を描いて、ようやく形になるもの。それを演じる私たちが薄っぺらな気持ちで臨んでしまったら、それは本当に申し訳ないことだと思うんです。
たくさんの方の想いがつながって、それが台本として手元に届き、それを音声としてお客さんに届ける立場の私たちが、その想いを蔑ろにしてしまってはいけない…………そんな気持ちで向き合っています」
一方、若き三石さんは先輩たちからどんな言葉を受け取ったのだろう。
「昔は、飲み会でいろんな話を聞けたのがよかったです。ありがたい話からそうでもない話まで聞けて(笑)、いい経験でした。『お芝居ってなんですか?』、『役者さんと声優の違いってなんですか?』とか聞いてましたねえ。嬉しかったのは、もう天国に行ってしまったんですけど、『セーラームーン』でご一緒した曽我部和恭さんが珍しく飲み会に参加したときのことでした。セリフもすごくステキだし、好きな先輩で。お話が聞きたいなと思って近づくと、私を指さして『彼女はね、自分の仕事をちゃんとやっている』と淡々とおっしゃったんです。尻尾を振って近寄ったのに、想像とは違っていたんですけど(笑)、いただいたのはとてもありがたい言葉でした。そして主役と脇役、敵役によってなすべき仕事が違うことも気づかされました」
年齢を重ねてもエネルギッシュに輝き続けている秘訣は、「筋肉をつけること」だという。
「“金より筋肉”ですよ。40歳から日舞をやったり、いまは殺陣をやったり。お芝居は筋肉がないとできませんから。下半身で踏ん張ってマイクの前に立ち、お腹から声を出す、これ、体力がないとできないんですよね。たとえば、私に「声優は2次元の絵を浮き上がらせて見せないと」と教えてくれた野沢雅子さん、本当にすごいですよ。あのエネルギーはどこから来るんでしょうね。一緒に『ドラゴンボール』に出て、同じスタジオで仕事したいなあ、なんて思ったりもします(笑)」
終始、唯一無二のかわいらしさと強さが同居した声色で、仕事に対する真摯な姿勢と茶目っ気たっぷりな発言を行き来してくれた三石さん。「おばあさんになるまで声優を続けたい」と話すが、そんな未来が楽しみで仕方がない。
みついし・ことの
1967年12月8日生まれ、東京都出身。勝田声優学院を経て1989年に声優デビュー。卒業後に劇団あかぺら倶楽部を結成し、舞台での活動も行う。着実にレギュラーやヒロイン役を演じる中、1992年に『美少女戦士セーラームーン』で主人公の月野うさぎ/セーラームーンを、1995年には『新世紀エヴァンゲリオン』で葛城ミサトを演じて国民的声優に。2005年からは『ドラえもん』で野比玉子を担当している。2021年には『リコカツ』(TBS)で初の連ドラレギュラー出演、2024年にはNHK大河ドラマ『光る君へ』に出演、ナレーターとしても活躍の場を広げている。