「女優になりたい」と思ったことはあったのか?

『萌の朱雀』への出演を決意する以前に、たとえば「テレビを見て、女優をやってみたい」と考えたことはなかったのだろうか?

「ないですね。たとえば、冗談でみんながよく言うようなことは言ってたかもしれないけど……住んでいたところが山奥すぎるから、まあなんか場違いというか、私のいるところはそんなこと考えることがおかしい、みたいな世界だった。それが……映画に出ちゃったからね(笑)」

 見る立場としては、「尾野さんがあのとき、『萌の朱雀』に出演し、女優の道を歩んでくれてよかった」と感じる方も多いだろう。10年のドラマ『mother』(日本テレビ系)や11年のNHK連続テレビ小説『カーネーション』など、ドラマの魅力と尾野さんの存在感が分かちがたく結びついている作品は多い。

「うれしいこと、言ってくれる(笑)。そう言ってくれたらうれしいです。言ったら、私じゃなくても、誰でもいいわけですよ。私じゃない人が、“この役”をやるかもしれないわけで。

 ひとりでもいいから、そういうことを言ってくれる人がいたら、それだけでやっぱり甲斐があるなって思います」と、尾野さんははにかんだ。