「よーい、スタート」という言葉で切り替える

 そして、「変わる、チェンジ」という言葉から尾野さんが発想するものについて問いかけると、「私が変わると言ったら、普段と本番の時の“よーい、スタート”ですかね。全く違うと思います」と語る。

「ほかのチェンジは、ずっとこんな感じなんでね(笑)。私、切り替えは得意としていて、泣く芝居だからって、前もって準備ができないんですよ。

 本番の“よーい、スタート”って言われないと、感情がちゃんと湧いてこないというか……。まだ恥ずかしいっていうのがあるのかもしれない。人の目も“よーい、スタート”がかからないと見るの苦手だし、頑張るより“よーい、スタート”ですね」

 撮影時、「よーい、スタート」をきっかけにスイッチが入るのは、女優を始めた当時からなのだろうか?

「そうですね……でもそれも、朝ドラ『カーネーション』からなのかもしれない。それまでは、お芝居が怖いからずっと感情作ってなきゃいけなくて、ずっとその役が抜けなかったりとか、すごくしんどかったわけですね。

 ずっとその感情で、その一作品にいなきゃいけない、その気持ちでいるって、おかしくなりそうじゃないですか。それが、だんだんと経験していくにつれて、“こうじゃなくてもいいんだ”、“そういうのがあるんだ”と楽しめるようになった。それはたぶん朝ドラで、よりいっぱい芝居をしたから自分に気づいたんだと思います」