音楽活動にも活きる海外生活「人類の音楽の原点を想像したくなる体験でした」

──退団後、結婚とともにバリ島で4年、オーストラリアで3年暮らされました。日本を離れることに不安はなかったのでしょうか。

「逆に、誰も私のことを知らない場所に行けるのが楽しみで、不安はなかったです。“姿月あさと”としての自分はもちろん、本名の自分のことも誰一人知らない土地にいるのはリラックスできました。表現者としての仕事を続ける上で、自分自身の安寧も大切ですから。もちろん海外ゆえの苦労もありましたが、それも含めて楽しく生きることができました」

姿月あさと 撮影/松野葉子

 海外での7年間は、彼女に安らぎを与えただけではない。音楽家としての感性を揺さぶる、未知の音との出会いが待っていた。

──現地で触れた音楽について、特に印象に残っているものはありますか。

「バリ島ではジェゴグやガムランといった伝統の楽器に出会いました。日本にも三味線やお琴があるように、その国独自の楽器が、住んでいると身近にあります。オーストラリアで初めて知ったのは、先住民の伝統的な管楽器であるディジュリドゥですね。どれも日本では聴いたことも見たこともなかったものばかりでした」

──そういった音楽は、姿月さんの音楽観にどのような影響を与えましたか?

「“世界の音楽の原初的なリズム”に近づけた気がします。石器時代から人は石を叩いたり、木を叩いたりして音を鳴らしてきたんだと思うんですが、そういう言葉や文字がない時代にも、リズムというものは存在したわけです。人類の音楽の原点を想像したくなる体験でした」

 今回のコンサートで、姿月さんは様々な昭和の名曲を披露する。異国で自分を開放し、プリミティブな音楽に触れた経験は、コンサートでも名曲を彩ってくれるだろう。