大学在学中の1966年、第7期東宝ニューフェイスに合格し、東宝俳優養成所に入所。1968年にフリーとなり、翌年に時代劇『無用ノ介』(日本テレビ系)の主役に抜擢される。同年、新国劇入りし、映画では東映と契約を結ぶと以後、多くの任侠映画、時代劇などに出演してきた伊吹吾郎。彼のTHE CHANGEに迫るーー。【第1回/全2回】
『水戸黄門』(TBS系)で格さんが印籠を見せるシーンは、けっこう大変なんですよ。
1983年にレギュラーとして出演が決まった後、過去の映像を研究しました。僕の前に渥美格之進を演じた横内正さんと大和田伸也さんは、親指と他の4本の指で印籠を挟んで持っていました。ただ、その持ち方だと、薬指と小指で印籠の一部が隠れてしまうんです。そこで僕は薬指と小指で印籠を後ろから押さえるようにしました。すると、安定しますし、葵の御紋がしっかり見えるんです。
これは、同じく83年に新たに黄門様を演じることになった西村晃さんの影響です。新キャストの発表会見の後、西村さんに、「俺たちに変わって視聴率が落ちたら、何を言われるか分からないぞ。お前は、どんな格さんをやるんだ?」と聞かれたんです。そして西村さんは、「俺はな、“ホ”から“ハ”で笑うことにした」とおっしゃいました。
「先代の東野英治郎さんが“カッカッカ”と笑っていただろ。同じじゃ面白くない。だから“ホッホッハッハ”とやるんだ」とのことでした。
そこで僕も自分なりの工夫をしようと、格さんの一番の見せ場である「この紋所が目に入らぬか」のシーンでの印籠の持ち方を研究したんです。
クライマックスの大立ち回りの後、懐からスッと印籠を取り出すのもなかなか大変でしたね。監督によっては立ち回りと印籠でカットを割ってくれるんですが、そのままの流れでやるとモタモタしてスムーズにいかないことも多いんです。機会があれば、その苦労の結晶も見てみてください(笑)。
そんな僕が生まれたのは、北海道の函館に近い熊石村というところです。日本海に面し、道路を挟んだ反対側には山があり、漁業と農業が盛んな小さな村でした。