「甘利田に8年間、自分自身が救われてきました」俳優・市原隼人にとって、『おいしい給食』が特別な理由とは──。
『おいしい給食』は、表面的にはコメディだ。甘利田先生が職員室で給食の献立表を愛しげになでるシーンから笑いがこみ上げ、メインイベントの給食シーンに大爆笑。しかし、この作品が愛され続けるのは、ただ笑えるからだけではない。
「私が重きを置いているのは、甘利田がポロっと吐く、社会へ向けた大切なメッセージのシーンです」
甘利田は、自分が好きなものをとことん愛し、人生を捧げる。「食べる」という、生き物にとってもっとも根源的な行為を、誰よりも真剣に……たとえそれが端から見て滑稽(こっけい)だったとしても……思う存分楽しむ。ライバルの生徒に負けたとしても、相手をリスペクトし、素直に負けを認める。
「そんな甘利田に8年間、自分自身が救われてきました。だから、この作品は……僕にとって特別なんです」
小学5年生のときにスカウトされて芸能界に足を踏み入れ、映画初出演にして初主演を飾った『リリイ・シュシュのすべて』(2001)、ブレイクのきっかけになったドラマ『WATER BOYS2』(フジテレビ系)“イッチー人気”が加速した『ROOKIES』(TBS系)、その後も『猿ロック』(読売・日本テレビ)といった主演ドラマや、肉体美が話題になった大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)、シリーズ化されている『正直不動産』(NHK)などなど、代表作と呼べる作品がたくさんある中で、『おいしい給食』が特別な理由は──。
「役者を続けていると、ビジネスと夢とが混沌として、時にいろいろなものに阻まれてしまい、夢を見失いそうになる瞬間もあります。私自身、何度も役者を辞めてしまおうかと思ったことがありましたし、役者という仕事を嫌いになりかけたこともありました。でも、この作品が改めて私を初心に戻らせてくれました。夢を追いかけることで、作り手も、観てくださる方も幸せな気持ちになれる。本当に特別な作品です」