50を過ぎるまで、“ファンです”っていう人に会ったことがなかった

 人間嫌いが極まっていた頃からは考えられないという充実ぶりを、淡々と話してくれる新井さん。そんななか、驚きの告白もあった。

新井「俺、50を過ぎるまで、“ファンです”っていう人に会ったことがなかったから」

ーーええ! これだけファンがいるのにですか? 俳優の佐藤二朗さんをはじめ、さまざまな著名人の方も新井さんのファンを公言していますけど。

新井「ずっと閉じこもってたから。いや、だからそれがよかったと思って。たぶん俺、30代でそういう人たちに会ってたら、天狗になってたかもしれない。いま、“そんなに読んでくれている人がいたんだ……”と思う機会が増えて。もう、キャパを超えちゃっているんです」

新井英樹 撮影/冨田望

ーーなんのキャパですか?

新井「あの……自分の人生の予定にないくらい褒められてしまって。これ以上褒められると、浮わついたことをやらかしたりするから“もういいんです”っていうのがあります」

 そう言いよどむ新井さん。作品という大前提がなくとも、人間的な魅力にあふれたそんな新井さんに、周囲の人は心惹かれるのではないだろうか。

【プロフィール】
■新井英樹(あらい・ひでき)
1963年生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、文具メーカーに就職、営業マンになるも漫画家を志して1年で退職。1989年に『8月の光』でアフタヌーン四季賞を受賞しデビュー。1993年、自身のサラリーマン時代の経験をヒントに描いた『宮本から君へ』で第38回小学館漫画賞青年一般向け部門を受賞。以降、『愛しのアイリーン』『ザ・ワールド・イズ・マイン』『キーチ!!』シリーズなど、掲載誌で異彩を放つ衝撃作を発表。2018年には『宮本から君へ』がテレビドラマ化され、映画『愛しのアイリーン』が公開。現在、新人女王様ふたりと、彼女たちを取り巻く個性的かつ魅力的なキャラクターによる人間讃歌『SPUNKー スパンク!ー』(KADOKAWA)を『コミックビーム』で連載中。6月12日に単行本1・2巻が刊行された。