鬼才と呼ばれ、熱狂的なファンを擁する漫画家・新井英樹。『宮本から君へ』『ザ・ワールド・イズ・マイン』『キーチ!!』といった作品からは激情がほとばしり、痛みをともなって読者に降りかかる。「20年間の引きこもり」を経て、新たな境地を見出した新井さんのTHE CHANGEを聞いた。【第1回/全5回】

新井英樹 撮影/冨田望

 かわいすぎる文鳥の姿が鳥かごからちらちらと覗き、美しい声が聞こえる。ここは漫画家・新井英樹さんの自宅マンションの居間。撮影のために案内してくれた作業場は、さきほどのほっこりかわいい文鳥の居間とはうって変わり、山積みの資料に囲まれ、壁に貼られた政治家の写真や映画『ダークナイト』ジョーカーのポスター、迫力に満ちた空間となっている。

「もうゴミ屋敷になってるけど」とお茶目に言う新井さんは、ここに30歳から50歳までの20年間、引きこもっていた。

 そのハイライトが描かれた2018年刊行の短編集『セカイ、WORLD、世界』に収録された『せかい!! 岡啓輔の200年』(初出:『ビッグコミックスペリオール』2015年4号)は、衝撃的なコマからはじまる。

<俺 新井英樹は50歳を過ぎて女装を始めました。>

 そんなナレーションとともに掲載されたのは、新井さんの女装写真。引きこもり期間を経て、テレビで浅草キッド水道橋博士が女装をしている姿を見て、「生涯しないと思ってたこと全部やる! まずは女装だ」と開眼したのだという。