紙の前で自問自答していたことは、まんざらムダでもなかったのかもしれない

新井「新しい漫画『SPUNKー スパンク!ー』の登場人物のモデルにもなっている、新宿二丁目のバー『bar星男』のオーナーの櫻田宗久くんも、俺のことなんかなにも知らなくて、でも話しはじめたら受け入れてくれて。“20年間外に出ていないのに、俺の話を聞いてくれるんだ、受け入れてもらえるんだ”って思ったことは、大きな体験でしたね」

ーーほかの出会った若い方々も、そういった感覚だったんですね。

新井「そうですね。相談してくれたりすると、“いやいや、経験値はあんたらのほうが全然上だよ”って思うんだけど。でも一応、俺の言うことも届いてくれるみたいで、そうすると、“紙の前で自問自答していたことは、まんざらムダでもなかったのかもしれないな”と、ちょっと思えるようになってきて」

 急速に広がった世界のひとつに冒頭の女装があり、さまざまな初体験があった。

新井「外出するときは“必ず、今までやったことのないことをやろう”ということで、初めて行く待ち合わせ場所に約束の2時間前に行って、木の扉のスナックを開けて呑んでこよう、とか。座ったら、話しかけて何分後に下ネタに持っていけるかチャレンジしよう、とか。いつも行く店に、通ったことのないルートで行こう、とか。

 そのうち店で知り合いができて、またその知り合いが人を紹介してくれて、枝葉のように広がって。50歳をすぎて友達ができるなんて、考えもしなかった」