僕の言葉に対する感性は、川柳を嗜んでいる父の影響が大きいと思います

 ルミネtheよしもとの新喜劇におじいちゃん役で出ている内海仁志という芸人がいて。内海はどくろ団という芸名でやっていたけど、15年くらい前に「板尾さんに芸名をつけてほしい」って言われたんです。ハリウッドのB級映画に出ていそうな俳優の名前なら本人とギャップがあって面白いんじゃないかと思って、「カートヤング」と名づけました。

 本人は気に入ったみたいで「カートヤング」に改名したけど、周りからは「カート」とも「ヤング」とも呼ばれていなかったですね。僕を含めて、以前の芸名の「どくろ」って呼んでいました。結局、今年4月に内海仁志に戻したんですけど、その連絡をもらったときも、「どっちでもええんちゃう」と思いましたね。

 名前をつける行為は一種の大喜利じゃないですか。対象にピタッとハマる名前にするか、あえて逆に張るか。いわゆるキラキラネームも、名前だけ見るとクスッとしてしまうけど、親は真剣につけたんでしょう。どう読ませようが「ええんちゃうかな」と思います。

 子どもに名前をつけることって難しいですよね。まだ何もない状態の人間につけるわけですから、どうしても「願い」や「親の名前から一字を取って」っていうパターンで名づけがちになる。大人になったら自分で自分の名前を決められたらいいなと思うんだけど。1回くらいチャンスがあってもいいんじゃないかなって。

 僕の言葉に対する感性は、川柳を嗜んでいる父の影響が大きいと思います。子どもの頃、大人たちが川柳を詠んでいるところに連れて行かれて、「書いてみるか?」って言われてましたから。川柳は5・7・5という限定された文字数でどれだけ広い世界を想像させるか、という娯楽です。しかも関西の川柳は、関東に比べてユーモアが入った作品が多いと思うんですよ。関西人の気質によるところが大きいんでしょうね。

 僕は余計なものを削ぎ落としたシンプルな言葉で取る笑いが好きですが、そうですね、それも川柳からきているかもしれません。結果的には、父が名づけた「創」に影響されたような生き方をしているみたいです。

板尾創路(いたお いつじ)。1963年7月18日生まれ、大阪府出身。NSC大阪校4期生。1986年にほんこんと蔵野・板尾(現130R)結成。芸人としてはもちろん、俳優・映画監督としても幅広く活躍している。

●インフォメーション
板尾創路さんがフェスティバルディレクターを務める「関西演劇祭2023」が11月11日~19日に開催
全国から選りすぐりの10劇団が登場。「観客やゲストの方が、公演を終えた劇団員にその場で感想を伝えたり、脚本や演出、演技への質問をすることができるので、演劇を見慣れている人もそうでない人も楽しめると思います。ぜひお越しください」会場はCOOL JAPAN PARK OSAKA SSホール。公式HP;https://kansai-engekisai.com/まで。