俺の中では“復帰はもうない”と思っていた

 それは、昨年10月から今年3月まで放送された『相棒season21』(テレビ朝日系)のクランクイン前のことだった。

 寺脇さんは、水谷豊さん演じる杉下右京の初代相棒・亀山薫として、単発の2時間ドラマ『土曜ワイド劇場』で放送されていた2000年からコンビを組み、レギュラー放送となった『相棒season1』(2002年)から『相棒season7』(2008年)の第9話まで出演。その後『season21』まで、長く右京さんの隣を離れていたのだ。

「去年、14年ぶりに復帰したんですけど、俺の中では“復帰はもうない”と思っていたから。だって、あのフライトジャケットを着て飛び回る若造を、60歳で上手く演じられるはずがないよと思っていたし。だから、豊さんから電話が来て“やって”と言われたときは、本当にびっくりしました」

 一瞬、躊躇した寺脇さんに対して水谷さんは「大丈夫、俺も70歳だから」とフォローを入れたという。

「いやまあ、たしかにそうなんですけど、右京さんはいいじゃないですか。俺は薫は“できるのかな……”と思ったけど、やっぱり、せっかく大好きな豊さんからのお話だったので、もちろん快諾はしたんです」

 撮影がはじまる前、寺脇さんは前髪がゆるやかに分けられるほど伸びていた髪の毛を短髪にした。すると、亀山薫のトレードマークともいえる、毛先まで生気が宿るツンツンヘアが蘇った。