いろんな角度から全身をぶつけ合って、触る

ーー漫才を捨てたんですか。

カシューナッツ 撮影/三浦龍司

カシュー「捨てたというか、別になにも手に入っていたわけではないんですけど。当時は大阪でやっていたんですが、その音のネタを1個だけ持って上京して。ありがたいことに、上京してはじめてあのネタをテレビでやったのが『細かすぎて』だったんです」

藤原「それに出たとたんに、すごいいろんな番組からオファーをいただいて、“急ピッチで作るぞ!”と。すごかったよね?」

カシュー「うん。“新しい音、ないか!?”みたいな。その時期はひたすら音作りでした」

藤原「水の音がいちばんいいネタで、超えるものがなかなかできずに大変でしたね」

「ネタ作り」ではなく「音作り」と言い表すふたりの作業は、独特だった。

カシュー「漫才師のネタ作りっていうと、喫茶店とかでノートを広げてやりますが、僕たちはカラオケボックスに集まって、いろんな角度から全身をぶつけ合って、触って、なんかいい音があるんじゃないか? みたいな」

藤原「ふたりきりでひたすらぶつけ合うって、ほんとうに地獄で。“なにこの時間!?”って、気がおかしくなるんですよ」

ーーたしかに(笑)。

カシュー「ドリンクを持ってきてくれた店員さんと、ドアのガラス越しに目が合うんですけど、僕らは上半身裸でずっと、体をぶつけ合っているから。向こうはノックをしかけた手を一旦引くんです」

藤原「気を使ってくれるんですよ。新宿のカラオケ屋の店員さんはしっかりしていますよね。ふたりが息を切らしてハァハァしているのを、見て見ぬふりをしてくれたりとか」

ーー何時間くらいやるんですか?

カシュー「気づいたら3,4時間経っていますね。サウナみたいになってます」

 さらに、音作りに欠かせないのはホームセンター。音を探すためには最適の場所だったからだという。

 そこで原点が生まれたのが「1947年アメリカの上空に突如飛来したUFOが飛行する音」だった。