~喫茶店での収録が終わり、ゆるんだ気持ちで一同居酒屋へ。コナリさんのご提案で、念のためテレコを回し続けた結果、さらにディープな会話を収録することができました。酒が入り話題があっちゃこっちゃいくので抜粋してお送りします!~

~再び『イカ天』の話~

喫茶店からほど近い居酒屋へ。石川さんと偶然入り、家庭的な雰囲気と料理の上手さを気に入り、それ以来定番となったお店です。退院後、このお店にまた来られた石川さんはとても嬉しそうです。完全に打ち解けて石川さんとお酒を飲めることがとても嬉しそうな長嶋さん。そんな二人をコナリさんもとても嬉しそうに見つめています。さらに全員お酒が大好きなので、楽しい予感しかない飲み会がスタート!

コナリ「お酒はもう飲んで大丈夫なんですか?」

石川「一応もう大丈夫です。前は毎日飲んでたけど1日おきにしてます。平田さんとこの店に来るといつも開店から閉店までいるけど、少し早めに上がらせてもらうかも」

コナリ「すごい! 話すことは尽きないんですか?」

――(編集・平田)「話すことは尽きないんですけど”石川さんと何喋ってるんですか?”と人に聞かれても楽しかった記憶はあるけど何も思い出せない……」

コナリ「今日は録音してるから大丈夫ですね!」

石川「この人は呑んべいだからね」

長嶋 (コナリさんに)「『イカ天』の本見せてくれる?」

コナリ「もちろんです。乾杯も待たずにいいですか?」

長嶋「そうね、乾杯してからにしようかな」
(という所で酒が到着)

――(編集・平田)「では石川さんの退院記念と、『いろんな私が本当の私』が完成した記念に乾杯!」

長嶋&コナリ「退院おめでとうございます!」

長嶋 (「イカ天」の本を見ながら)「『イカ天』はたった1年でなんとなくブームが終わったじゃないですか」

コナリ「なんか短いんですよね」

石川「放送は2年弱だからね。1年目に出たバンドが次々デビューしたから、オーディション番組的になっちゃって、音楽的にちゃんとしたものが求められるようになっちゃった。バラエティー色の強い変なバンドを求めてた1年目とは違ってきたんだよね」

長嶋「そこが面白かったのに途中で優等生的というか、本気になっちゃった。で、程なく番組が終わっちゃう」

コナリ「そういう感じって、視聴者も気づいちゃうんですか? 変わっちゃったなぁみたいな」

石川「最初の年はバラエティ番組として、音楽で変なことやってる人を出して盛り上げようって感じだったんだけど、デビューするバンドが多くなってきて『スター誕生』や『M-1」のような番組になっていったんですね」

――(編集・平田)「素人面白バンド番組としてスタートした『イカ天』が、『たま』の出現によって終止符を打たれた印象なんですよね」

長嶋「そうかもね」

――(編集・平田)「『たま』以上のバンドは絶対出ないだろうって、うっすらみんな分かって見てた感じがして。バンドのオーディション番組になっていったのは必然だったような気がします」

長嶋「当初出演したバンドは割とそういう感じだったと思う。好きなことやっててちょっと出てみようくらいな感じだったり、むしろ演奏下手なのにパフォーマンスをしたい、受けたいとか、学園祭的なノリでしたよね」

石川「後半は音楽的にちゃんとしてる人ばっかりだよね」

長嶋「不思議な話だよね。ちゃんとしてる方が本当なら正しいのに」

石川「音楽に興味ある人だけが見るようになったんだよね。初期は音楽を聴きたいわけじゃなくて、変なことやってる表現者を見たい人たちが番組を見てたんだよね」

――(編集・平田)「『イカ天』が無いと『たま』が世に出なかったのは間違いないんですけど、『イカ天』にとどめを刺したのは『たま』なんですよね」

コナリ「何度も言う!」

石川「そんなことになるとは!」

つづく

■石川浩司(いしかわこうじ)
1984年、「たま」を結成。担当はパーカッション。89年の「イカ天」出演を機に翌90年にメジャーデビュー。2003年の「たま」解散後も精力的に音楽活動を続ける。

■長嶋有(ながしまゆう)
2002年、「猛スピードで母は」が第126回芥川賞受賞。2007年、「夕子ちゃんの近道」が第1回大江健三郎賞受賞。2016年、「三の隣は五号室」が第52回谷崎潤一郎賞受賞。

■コナリミサト(こなりみさと)
「凪のお暇」が「このマンガがすごい!2019」オンナ編第3位、「第65回小学館漫画賞少女向け部門」受賞、黒木華主演でテレビドラマ化。秋田書店「Eleganceイブ」にて連載中。