『たま』が“日本のビートルズ”っていわれる所以
――(編集・平田)「『レボリューション9』を最初聴いたとき、どう思いました?」
石川「あれね笑 これ音楽じゃねーって思ったよね笑」
コナリ「『レボリューション9』ってどんな曲なんですか?」
石川「サウンドコラージュみたいな感じだね。街の音とか、いろんな音を集めてコラージュしてるから音楽じゃないよね笑 時々音楽が鳴ることは鳴るんだけど……」
長嶋「何でもやって駆け抜けたバンドなんですね、『ビートルズ』って」
石川「ベースを弾かないで、みんなの声でベースをやったり」
コナリ「声でベース? それ誰かが言い出すんですかね? ちょっと声でベースをやろうぜとか」
石川「みんなで面白がってやるんじゃないですかね」
コナリ「楽しそうだな~」
石川「来日したときにエンヤトットのリズムを気に入って、曲に取り入れたりね」
長嶋 (急にハっと気づいて)「僕! なんか! 『ビートルズ』の話を! プロのミュージシャンと! 今! ああ! プロの! ミュージシャンに『ビートルズ』の聴きどころを! 話をしている!」
石川 (淡々と)「テープの逆回転を取り入れたりとかね。実験音楽の人がやっていたかもしれないけど、メジャーなのにアングラの要素を取り入れてより深いものにしてるような印象ですね」
長嶋 (いったん落ち着いて)「でも『たま』もポップだったし……」
石川「『たま』も今思うと、メンバーは好きな音楽がみんな違っていて、大雑把に言うと、フォークの知久(寿焼)、ポップスの柳原(幼一郎)、アングラの石川、滝本(晃司)は何かな、う~ん……。そんなメンバーが20代の時に集まってお互いにアイデアを出しあって『たま』が生まれたと思ってます。メンバーが誰一人欠けても成立しないし、もし僕らが40代で集まっていたら同じことはできなかっただろうなって思いますね」
コナリ「40代で集まったらできなかったと予想するのは何故ですか?」
石川「本質的な根っこの部分がむき出しだったのは20代までかなと。30代以降は他人の意見を色々聞いて変わっていった部分があったと思う。年取ると頑固になって、自分の音楽のスタイルが決まっちゃって、他のものを取り入れることがなかなかできないんですよね。『たま』のメンバーとは20代で出会ったから、柔軟に他のメンバーの根っこにあるものを自分の中に取り入れられたんでしょうね」
長嶋「なるほど、『たま』が『日本のビートルズ』っていわれる所以は、『ビートルズ』同様4人が全員作詞作曲してボーカルも全員取るからですよね。『ビートルズ』もお互い影響を受けあったところも大きかったでしょうね」
石川「ただ、あんなに売れなかった」
長嶋「笑。売れる売れないとかじゃなく、すごいバンドです」
『たま』の4人が20代で出会ったこと。これこそが石川さんたち『たま』の『THE CHANGE』だったのかもしれない。
――(編集・平田)「『たま』は今でも若い人に刺さって、毎年新しいファンが増えているからすごいです。『「たま」という船に乗っていた』を作って一番嬉しかったのは、お父さんが買ってきたこの漫画を小学生の子供が読んで『たま』に興味を持って『たま』を聴きだして、知久さんのライブに行ったっていうエピソードです」
石川「そう、漫画から入って、音楽を後から聞いたって人も出てきてるからね。嬉しい~」
コナリ「漫画に出てくる歌を直接聴けるってことですよね」
――(編集・平田)「開始から2時間、だいたい話し尽くしましたかね」
長嶋「石川さんとコナリさんのカップリングは珍しいから貴重だよね」
石川「コナリさんと会った話は、表に出てないですからね」
コナリ「そうなんですよね!」
長嶋「僕は石川さんの一方的なファンだから、2人で話すとミーハーな感じでスリルのない対談になっちゃいそうだったんで、コナリさんに入ってもらって鼎談の形にして良かったと思います」