テレビではなくラジオをずっと聴き流している理由

 ここまで仕事が集中したのは、ほいさんのさんまさん研究の賜物だった。

「さんまさんって、場面によってしゃべり方が変わるんですよ。大阪弁に標準語が混ざるし、敬語も使う。相手によってツッコミ方が変わったりもする。後輩には“何回同じこと言わすねん!”、目上の人には“あのぉ〜、なんべんも言ってますよねえ?”、同世代には“なにしとんねん、何回も言うてるやろ!”と、相手によって違う。そういう細かい違いを観察していました」

ーー観察する以外に、どんな訓練をしたんですか?

「英語教材のスピードラーニングってあったじゃないですか。あれ、理にかなってるんですよね。僕はさんまさんのラジオを録音して、ずっと聴き流しているんです。実は、テレビでのさんまさんは出演者を回す立場にいるから、さんまさん自体の発言ってそこまでの量じゃない。
 でも、ラジオはさんまさんの独壇場だからエピソードも入ってくるし、間もクセも入ってくる。そうすると、さんまさんのしゃべりが自分の中の“さんま脳”に記憶される。MBSのラジオ番組『ヤングタウン』を毎週聴くために、radikoのプレミアムに入ってます」

 そして、突然、明石家さんまさんがその場に降臨する。

「さあ、今日はですね。また仲間がちょっと亡くなったりして。俺もおない年やからな。知ってるか? 島崎って、『ひょうきん族』で一緒に戦った仲間で、アダモちゃんっていうキャラでな」

 いきなりさんまさんの声でしゃべり出したほいさんに、同席していた編集者が「うわ!」と声を上げ、「それ、先週の放送……そのまま……」と絶句する。

「ただ、完コピじゃないですよ。“さんま脳”になっているから、それを自分の記憶のように思い出しながらしゃべっているんです」

 もはや常人ではありえない域に達しているほいさん。2024年新春放送の番組でも、さんまさん役での出演を多数控えているという。

ほいけんた
1965年7月7日生まれ、東京都出身。高校2年生の頃にアクションチーム入りし、1983年に俳優デビュー。以降、お笑い芸人としてストリップ劇場やショーパブで修行、プリンセス・テンコーのアシスタントを経てマジシャンや大道芸人としても幅広く活動し芸を磨く。明石家さんまのモノマネで注目を浴び、本人役で再現ドラマに多数出演するようになる。2020年に歌うま芸人として認知を高め、2022年9月に出演した『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)をキッカケに大ブレイク。「カラダぐぅ」「くるっくー」などのフレーズは大バズリしている。