アーティストがうまくそれを伝えることができないと真意が伝わらない

「僕の世間のイメージから一番遠いのが “詩”だと思うんです。作詞家として詩を託す時には、そのアーティストの言葉や声として僕の言葉が伝わっていく。結局、文字ではなくて、歌として届くのです。

 たとえば、僕が書いたものがどんなに意味のあるものでも、アーティストがうまくそれを伝えることができないと真意が伝わらない。作詞家として、ある種の限界を感じる時があります。もちろん反対に、アーティストが僕の言葉の意味をもっと何倍にも伝えてくれることもあるんですけどね」

――いま現在、書籍で詩集を出すことについての思いはどのようなものでしょうか。

「僕の詩をメロディー、ビート、そしてアーティストっていうものを無くした状態で、僕の言葉だけでどれだけ意味のあるものが書けるのかって自問したんです。ある意味、それは自分の言葉を自分に託すっていう行為に近い。それをやってみたい、とひらめいて、形にしたのが詩集なんですね。

 1994年から詩のリーディングライブを始めて、詩集という形で残してきたんですが、30年間で5冊しか作れなかった。どうしても本業の作詞や舞台の仕事が忙しくて、詩集を作ることが自分の中でも後回しになっていたんです。そして2024年の1月で70歳になる。“これではよくないな……”って、自分にカツを入れようと思ったんですね(笑)。それで、今まで作ってきた5冊の中から、今でこそ読む意味があると感じられるものを選んで『感情の配線』としてまとめたわけです」