頭の中で読んでもリズムやグルーヴを感じられる詩にしたい

ポエトリーリーディングやミュージカルの舞台も手掛けている森さんならではの、詩へのこだわりとはなんだろうか。

森雪之丞 撮影/冨田望

「朗読のために、詩の書き方を変えていた時期もあるのだけれど、基本的には言葉に出して読むということだけではなく、頭の中で読んでもリズムやグルーヴを感じられる詩にしたい、って思いながら書いています。『SOKOに居た』(『絶望を愛した38の症例』2003年)も、“イタ”という言葉をずっと入れているのです。イタが、ここに居たのイタになったり、異端者のイタや痛みのイタになったりする。言葉の意味を伝えるための要素と、いかに言葉として響きが良くて遊べるか。その両方がそろうと“イタ”でグルーヴが作れるんですね。ポエトリーリーディングは、音楽のライブとは違うけれど、遊び要素を入れつつもラップみたいな韻を踏むことができるんです」

 作詞家でもあり詩人でもある森さん。詩と歌詞との違いを聞いた。

「『SOKOに居た』にしても、あれは歌詞と違って文字制限がないからできた作品なんですよね。だからこそ自由な言葉遊びが可能だった。あの詩には大事なテーマがあって、自分がいろいろなところにいて、痛みを抱いている。画びょうのようにその痛みを地図に押していったら、それが自分の顔になる。つまり、振り返ってみたら、それが自分自身なんだよっていうことを伝えたかった。あの作品は自分でも好きな作品ですね」

 印象に残る言葉を紡いできた森さん。『感情の配線』にはそんな森さんの思いが溢れている。

●もり・ゆきのじょう
1954年1月14日生。東京都出身。作詞家、詩人、劇作家。大学在学中からオリジナル曲のライヴを始め、プログレッシブ・ロックバンド『四人囃子』のゲスト・シンガーとしても活躍。1976年に作詞&作曲家としてデビュー。以来、ポップスやアニメソングで数々のヒット・チューンを生みだす。90年代以降、布袋寅泰、hide、氷室京介など多くのロック・アーティストに詞を提供。リリースされた楽曲は2700曲を超える。詩人として、94年より実験的なポエトリー・リーディング・ライヴ『眠れぬ森の雪之丞』を主催。初の自選詩集「感情の配線」を2024年1月14日に発売。

作品情報
タイトル:森雪之丞自選詩集『感情の配線』
発売日:2024年1月14日
価格:2,500円(税別)
森雪之丞が1970年代より行動する詩人として、紡いできた珠玉のことば[詩]。
既発の詩集『詩画集 天使』『近未来詩集』『絶望を愛した38の症例(サンプル)』『天才的な恋』『扉のかたちをした闇』から著者自身が厳選し、さらに文芸誌『すばる』で連載時から話題となった天才・森雪之丞の生み出した図形詩が初収録。他、Act Against AIDSでの朗読の為に書下ろした詩作など、森雪之丞初のオールタイムベスト詩集。

イベント情報
1月25日には、出版を記念して代官山 蔦屋書店にてイベントを開催。森雪之丞が特別なゲストに猪塚健太、牧野由依、礒部花凜を招いてポエトリーリーディングの魅力を届ける。イベント参加チケット、及びオンライン参加チケット付き書籍は、1月13日17時より発売開始。自選詩集「感情の配線」、そして発売イベントの詳細は、森雪之丞オフィシャルサイトにて。