一貫して自分の中にあるテーマとかは繋がっていると思います

 自選の詩集には、装丁からデザインまでこだわった。冒頭の言葉のとおり、表紙の絵は森さんの娘さんが16歳のときに突然描いたものだという。

 本を手にした森さんは、「ここって何て呼ぶか知っていますか?」と、本の天辺のページと背表紙が接着されている部分を指差しながら、取材者に尋ねる。

「花布(はなぎれ)って呼ぶんですよ。僕も初めて知った(笑)。ふつうは知らないですよね。でも今回はこういう細かい部分の色まで自分で選んだんです。本という形が残るものを作るのなら、少しでも意味があるものにしたいっていう気持ちで。もちろん中身も大事なのだけれどね。本づくりって、こんなにいろんなことを決めなきゃならないんだ、って驚きました」

 普段はなかなか気づかない花布の色まで、森さんがこだわって選んだという。

「自選詩集なので、5冊出した詩集の中から選んでいるのですが、書き下ろしも数編載っています。今の時代に読んでも意味があるもの、みんなに触れてもらいたいものという視点で選びました。天使の詩(『詩画集天使』1994年)は、30年前に書いたものです。詩集としては江國香織さんとの共著『扉のかたちをした闇』(2016年)が一番新しいのですが、今の年齢に一番近いのはやはり今回書き下ろしした詩ですね。

 30年間の間に書いた詩なので、当然、書いた時といまと時代も変わってきています。若い頃の拙い詩とか様々な種類の詩が入っているのだけれど、それでも一貫して自分の中にあるテーマとかは繋がっていると思います。『感情の配線』の配線って、意図的に組み立てているってことで、読み直してみて、自分のもっている表現方法は、この30年間変わっていないなって逆に自分で気づかされましたね」