作詞家・森雪之丞の世界ははてしなく広い。『ドラゴンボールZ』から『キン肉マン』、『プリキュア』といったアニメの楽曲から、布袋寅泰、氷室京介、さらにはキャンディーズ、シブがき隊といったアイドルの曲も手がけてきた。激動の時代を越え、48年目を迎えたレジェンド作詞家の人生の転機とは?【第1回/全5回】
「これ、娘が16歳の時に描いた絵なんです」と、書籍の表紙見本を取材者に見せ、穏やかな声で森雪之丞さんは語りはじめた。黒のセットアップにかっこいい靴。キャンディーズやシブがき隊という往年のアイドルから、ドラゴンボールやプリキュアといったアニメのテーマ曲まで幅広く手掛け「日本のシェイクスピア」との声もある作詞家は、とにかくおしゃれだ。
リリースされた自身の楽曲は2700曲を超えたという森さん。驚異的な仕事量だが、その音楽のルーツは、ロックだった。
「もともとはデヴィッド・ボウイとプログレが好きだったので、ロックの世界で生きていきたいと思っていたんですが、僕は歌があまり上手じゃなかったのもあって、作詞家としてキャリアをスタートさせました。
最初はアイドルの曲を書いて、自由な歌詞を書けるアニメの世界に行って、そこからロックに戻って来ました。2000年からはミュージカルの舞台を手掛けるようになりましたし、僕のキャリアは色々な変遷があるので、どこで僕の詩に出会ったかによって印象が、アニメだったり、アイドルだったり違ってくるみたいですね」
冒頭で見せてくれた見本の書籍とは、詩集『感情の配線』。2024年1月14日、森さんの70歳の誕生日に上梓される自選詩集。膨大な数の楽曲を手掛けているが、実は詩集は30年間で5冊しか出版されていないという。