仕事を仕事という意識ではやっていない

「もちろん詩も、歌詞も語られている内容も大事だけれど、歌の場合は文字で見るのではなくあくまで曲として頭の中に入ってくる。いかにメロディーと歌詞がよい形でマッチしているかってことがすごく大事。それが上手くいった時に、みんなの心に残るのだと思います」

森雪之丞 撮影/冨田望

――森さんの手掛けた作品には、言葉遊びがよく見受けられます。意識されているのでしょうか。

「昔ならダジャレって言われたけど(笑)、韻を踏むことって大事だって思うんです。日本語がすごいのは、英語を日本語に取り込んでいくところ。だから韻がめちゃくちゃ踏めるんだよね(笑)。布袋君に書いた曲(『EMERGENCY』2008年)でも、“体温”と“ライオン”とかね。‟俺達の体温・囚われのライオン”って、ネイティブなライオンの発音だったら、韻を踏めないのだけれど日本語の発音だと韻が踏める。日本語の歌詞って不自由だって言われているけれど、逆に言うとそこが日本語の面白さでもあると思います」

 森さんの自由奔放な発想の裏には、アーティストや作品への分析やたゆまぬ努力が隠されていた。

「周りから見て、裏側の部分を感じさせていないのなら、それは作り手としても嬉しいことだと思いますね。語弊があるかもしれないけれど、僕の場合は仕事を仕事という意識ではやっていない。世間でいう、苦労して働くとか、仕事イコールつらいっていうことではなくて、どんなに疲弊しても僕にとって創作することが一番幸せなことだから」

 そして、にこやかな表情で、森さんはこう続けた。

「もちろん幸せの裏にはつらいことも努力も忍耐も隠れているけれど、たとえばサッカー選手や役者や料理人だって、みんなやりたかったことが仕事になったら、それって一番幸せなんじゃないかなって思うんですよね」

●もり・ゆきのじょう
1954年1月14日生。東京都出身。作詞家、詩人、劇作家。大学在学中からオリジナル曲のライヴを始め、プログレッシブ・ロックバンド『四人囃子』のゲスト・シンガーとしても活躍。1976年に作詞&作曲家としてデビュー。以来、ポップスやアニメソングで数々のヒット・チューンを生みだす。90年代以降、布袋寅泰、hide、氷室京介など多くのロック・アーティストに詞を提供。リリースされた楽曲は2700曲を超える。詩人として、94年より実験的なポエトリー・リーディング・ライヴ『眠れぬ森の雪之丞』を主催。初の自選詩集『感情の配線』を2024年1月14日に発売。

作品情報
タイトル:森雪之丞自選詩集『感情の配線』
発売日:2024年1月14日
価格:2,500円(税別)
森雪之丞が1970年代より行動する詩人として、紡いできた珠玉のことば[詩]。
既発の詩集『詩画集 天使』『近未来詩集』『絶望を愛した38の症例(サンプル)』『天才的な恋』『扉のかたちをした闇』から著者自身が厳選し、さらに文芸誌『すばる』で連載時から話題となった天才・森雪之丞の生み出した図形詩が初収録。他、Act Against AIDSでの朗読の為に書下ろした詩作など、森雪之丞初のオールタイムベスト詩集。