ピンチをピンチと思わない
当時の深刻な話を、外山さんは明るく語ってくれる。ピンチの受け止め方が独特だったようだ。
外山「私なんて、会社に入ってからピンチだらけでしたよ。一度、同期と一緒に飲みながら、後輩の悩み相談を聞いていたことがあるんですけど、その同期が後輩に“おまえが外山だったら、とっくに死んでいるぞ”って、言いましたから。あなたの悩みはたいしたことないって、言いたかったんだと思いますが、まわりにもそんな風に思われていたんです。
ピンチがチャンスだと思ったことはないんですけど、ピンチをピンチと思わないようにしていたところはあります。会社で仕事がないならないなりに、たとえば美術館に行ってみるとか、本をたくさん読んでみるとか、何かをするようにしていたので。なにが勉強になったのかは、正直、わからないですけどね」
ピンチでつらかったとしても、そこで落ち込んだりあがいたりせず、やれるべきことをやって日々を過ごすようにする。
外山「どうせ自分なんてって考えることだけは、しないようにしていました。なぜならそれは、全部、自分がやった結果だから。どこから見てもひどいことを言っている人も、その人からしたら、ちゃんと正しいことを言っているという場合もあると思うんです。当時は“えっ?”て思いましたけど。今となってはそう思います」