超一流のもとで経験を積み、芸に磨きをかけた

 ショーの中で観客に見せる、演者の一挙手一投足にも意味がある。植草さんがそう考える裏には、さまざまなフィールドで披露し続けた演技経験がある。

「ドラマができるから、舞台ができるわけじゃないし、舞台ができるからドラマができるわけじゃないんです。一つ一つ手順を踏んで、初めていろんな仕事ができるんだよね」

 経験を積んだ今では、舞台上で「こんなやり方もありだな。あんなこともできる」と、「臆せず、さまざまな表現にチャレンジできるようになった」とも話す植草さん。そんな植草さんも、中学2年生で芸能界に足を踏み入れたときは、右も左もわからなかった。何が転機となったのだろうか。

「演出家の蜷川幸雄さん、劇作家のつかこうへいさん、テレビプロデューサーの石井ふく子さん。そういう方たちに演出をしていただいたというのが良かったですね。時代が昭和だったので、ダメ出しは痛烈でしたけど(笑)。“これがダメだ、あれがダメだ”と延々、言われるわけですから」

 そんな人々に学び、芸に磨きをかけた植草さん。そんな同氏だからか。今の芸能界は、少し物足りなく感じるという。

「若い子たちは皆んな、メチャクチャうまいですよ。ただ、効率を求めてやっている子が多い気がしますね」

 23年末に行われた『第73回NHK紅白歌合戦』には、お隣の韓国から、13人組男性グループSEVENTEENや5人組のガールズグループNewJeansを筆頭に、7組のK―POPアイドルグループが出場。少年隊が出場した1980年代後半のように、日本の大手芸能事務所に所属している歌手が、紅白の舞台でズラリと顔を揃えていた時代とは、一変した。

「カッコいいからK―POPのマネをする。それはいいと思うんですよ。ただ、韓国のエンターテインメントってカッコいいだけじゃないんです。ドラマにしたって『イカゲーム』も『梨泰院クラス』もアジアではなく、世界でどう展開するかを視野に入れて作品を作っている。どんな作品にしたいか、自分たちのオリジナリティはなんなのかを考えて作品作りに取り組まない限り、K―POPをマネしても、ただのモノマネになってしまいますから」

 植草さんがそう考えるのには理由がある。