三谷幸喜がより自身の引き出しを広げてくれた

――脚本を書いた三谷幸喜さんとは、舞台『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』や、今年も『オデッサ』でタッグを組んでいます。

「『鎌倉殿の13人』の場合は、演じた役が実在した人物なので、いろんな資料や伝わっていることなどから三谷さんも脚本を書かれていったと思うのですが、そのなかでも僕がハマるところに当て書いてくれたのかなと思います。普段、僕はエキセントリックな役が多いんです。犯人役とか、叫んでいるような役を求められることが多い(笑)。

 それを三谷さんは『鎌倉殿の13人』で、人生で、一回も絶叫したことがないような悩める青年、実朝を僕にくれた。和田義盛(横田栄司)が目の前で殺されても、叫ぶけれど絶叫ではなかった」

――あのくだりは残酷でした。

「今まで僕が求められてきたものじゃないものを、三谷さんはやらせてくれる。そこは不思議ですね」

――ご自身の中には実朝のような部分がもともとあるのでしょうか。

「もちろんありますし、どちらかというと、ふだんの自分はエキセントリックより、おとなしい実朝側かもしれません。そこを三谷さんはよく見て下さっているなと思うし、一方でシャーロック・ホームズはまた全然違う役でしたね。三谷さんは、見る角度や視点が違うんだなと思います」

柿澤勇人 撮影/冨田望

 違った視点からというのも、柿澤さんが刺激してくれるからこそだろう。

 一方、『ハムレット』は400年以上も前(1601年ごろ)に書かれたシェイクスピアによる戯曲だが、“かっきー”だからこその「デンマークの王子ハムレットの悲劇(原題直訳)」に期待がかかる。

柿澤勇人(かきざわ・はやと)
1987年10月12日生まれ。神奈川県出身。
2007年に劇団四季『ジーザス・クライスト=スーパースター』でデビュー。
劇団四季退団後は、映像作品にも活躍の場を広げる。主な出演作に舞台『海辺のカフカ』『デスノート THE MUSICAL』『メリー・ポピンズ』『ジキル&ハイド』『スクールオブロック』『オデッサ』、映画『鳩の撃退法』、ドラマ『真犯人フラグ』『不適切にもほどがある!』など。2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で源実朝を好演したのも記憶に新しい。第31回読売演劇大賞にて優秀男優賞を受賞。5月に上演される彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』でタイトルロールのハムレットを演じる。

●作品情報
彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』
【原作】:W.シェイクスピア
【演出】:吉田鋼太郎
【出演】:柿澤勇人、北香那白洲迅、渡部豪太、豊田裕大、正名僕蔵、高橋ひとみ、吉田鋼太郎 ほか
【HP】https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/98587/