石倉三郎からの言葉に思わず“かっこよ……!”

 ドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)から映画『シン・仮面ライダー』まで、2022年から23年末までに映画7本、ドラマ6本に出演するなど、引く手あまたな俳優、柄本佑さん。

 その演技が評価され、第40回エランドール賞新人賞を受賞した2016年から遡ること2、3年ほど前のことだった。

「石倉三郎さんと呑み屋で飲んでいたときのことです。うちの父が石倉さんのことが大好きで、非常に仲良くさせてもらっていて。僕もそのとき、石倉さんからいっぱい話を聞いていて」

 柄本さんの父といえば、日本を代表する名優のひとりである柄本明さん。

「お酒も進んできたころあいで、石倉さんから“佑が出ている作品を観た”と言われたんです。パパパっと感想を言われて、おそらくそのときの僕があんまりだったんでしょうね。帰りがけにいただいた言葉が、そのときから今まで、ずっと忘れられないんです」

 酔いが回ったゆるやかな足取りで出口に向かう石倉さんが、ふと足を止めた。そして、こう言ったという。

「佑、やりすぎずに逃げ道を作ることが、粋だよ」

「そう言って帰られて。“かっこよ……!”と思いました」

3割ぶん、読み手が逃げることができる場所を作ってあげることが、粋だ

ーー去り際に、かっこよすぎますね。

「本人は覚えていらっしゃらないでしょうけどね、僕にはめちゃめちゃ刺さったんです。その真意はおそらく、“3割ぶん、読み手が逃げることができる場所を作ってあげることが、粋だ”ということなんだろうなと、僕はとらえていて」

柄本佑 撮影/冨田望

ーーそのとき、なにか心当たりがあったんでしょうか。

「そうですね、たしかに自分なりにもちょっと思うところがある芝居で、そこをスッと見抜かれた感じだったからこそ、よけいに刺さったんです」

ーーそれ以降、演じ方に変化があったり?

「そういうところがイコールに繋がらないというところもまた、ちょっとおもしろいんですよね。そう簡単には操作をすることができないというか。
 やりすぎずに逃げ道を作る……じゃあ、やりすぎるってなんだろう……じゃあ、やるってなんだろう……じゃあ逆に、やらないって……? と、どんどんわからなくなっていくので、そう簡単に変えられるようなものではないですよね」

 追求し続けるからこそ、柄本さんは留まらないのだ。