モデルの世界で、一生は食べていけないな

 モデルとして生きて行くと覚悟を決めてからは、ある程度、何か形になるものを示したいと思っていました。両親は学費を出して僕を大学に進学させてくれましたからね。

 そうやっていろいろあがいていると、さまざまな縁から『メンズノンノ』創刊号からモデルを務めさせていただく仕事をもらい、さらにはパリコレ進出まで果たすことができました。しかし、ここでモデルとしての限界を目の当たりにします。当時のトップモデルはみんな186センチ越えでマッチョ、183センチの僕は小さすぎたんです。

 僕が着ると服が大きくて、ダボダボになってしまって、「モデルの世界で、一生は食べていけないな」って感じました。日本だけを市場とするならば問題ないのかもしれないですが、生涯、日本だけのモデルで食べていた人って当時はいなかったので、このままではどこかで僕のモデル人生も終りがくるのではと、帰りの飛行機の中で考えてましたね。

加藤雅也 撮影/柳敏彦

 これまでとは違う表現方法で生きていく必要がある。そう考えて挑戦しようと思ったのが役者です。ただ、事務所に相談をすると、「男性の役者は考えていない」と言われたので、それならばと事務所を変わることになります。

 役者としてのデビューは、1988年公開の『クレイジーボーイズ』『マリリンに逢いたい』で主演を務めたときからです。想像以上に運が良くてトントン拍子にものごとが進んでいったのですが、考えてみると僕には何もないとも冷静に分析をしていました。演劇の勉強をしたことがないので、いつか張り子の虎であることは必ずバレてしまう。だから絶対にどこかで自分は役者としての修業をしなければならないと思ってました。

加藤雅也(かとう・まさや)
『メンズノンノ』創刊号のファッションモデルを務め、パリコレにも出演。モデル活動を経て、1988年に『マリリンに逢いたい』で俳優デビュー。現在はラジオDJ、写真家としても活動の場を広げている。近年の主な出演作に『1秒先の彼』『カムイのうた』『カラオケ行こ!』『キングダム』がある。レギュラー番組は『加藤雅也のBANG BANG BANG!』(FM yokohama)。初の著書である『僕の流儀What’s Next?』が発売中。Instagram:@masaya _kato1192

映画『幽霊はわがままな夢を見る』
下関出身のグ スーヨン監督が贈る、切なくもおかしい人間ドラマ
女優の夢が敗れ、故郷の山口県下関市に帰ってきたユリ(深町友里恵)は、父親の昌治(加藤雅也)が経営する倒産寸前のFM局を手伝うことに。『耳なし芳一』をモチーフにしたラジオドラマで、起死回生を図るが……。監督・脚本はグ スーヨン。
6月29日( 土)東京・渋谷ユーロスペースで公開ののち、全国で順次公開。