海外の映画祭で多数受賞

 まさにその志と腕により、第71回サン・セバスチャン国際映画祭のコンペティション部門で、藤さんは日本人初となるシルバー・シェル賞(最優秀俳優賞)を受賞。第67回サンフランシスコ国際映画祭では、最高賞のグローバル・ビジョンアワードを受賞した。さらに藤さんは、ニューヨークで開催される北米最大の日本映画祭ジャパン・カッツでの、特別生涯功労章の授与が決定している。

ーー海外の映画祭での評価の高さは、言葉の壁などさまざまなものを乗り越えたからこそですよね。

「そうなんですよ。でも、なぜ評価されたのかはわからない。出来上がったら、とてもインパクトのある、心を揺さぶるような作品になったということだから、映像って不思議だなと私も驚いたし、だから、観客の方々にも驚いてほしいですね。新しい作品になると感じています。言葉では説明のつかないエネルギーを持った映画だと思います」

 そのエネルギーは、最後まで力強い視線を向けてくれた藤さんこそ発信源ではないか、そう思わずにはいられなかった。

ふじ・たつや
1941年8月27日、中国・北京に生まれる。大学在学中に日活にスカウトされ俳優活動をスタート。1962年公開『望郷の海』で映画デビュー。70年代初頭まで「日活ニューアクション」で存在感を放つ。テレビドラマで2枚目俳優として人気を博していた1976年、大島渚監督作『愛のコリーダ』で主演を務め、海外にもその名を轟かせる。近年は連続テレビ小説おかえりモネ』(NHK)や『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)など話題となったテレビドラマにも出演。7月12日公開映画『大いなる不在』で、第71回サン・セバスチャン国際映画祭のコンペティション部門でシルバー・シェル賞(最優秀俳優賞)を受賞した。

『大いなる不在』
卓(森山未來)は、ある日、小さい頃に自分と母を捨てた父(藤竜也)が警察に捕まったという連絡を受ける。
妻(真木よう子)と共に久々に九州の父の元を訪ねると、父は認知症で別人のようであり、父が再婚した義理の母(原日出子)は行方不明になっていた。卓は、父と義母の生活を調べ始めるが――。
監督:近浦啓
出演:森山未來 真木よう子 原日出子/藤竜也
7月12日より全国公開