少しでも時間が空いたら、カラオケボックスへ

「鬼レンチャン」では、わずか半音でも音程がズレたら即チャレンジ失敗。歌唱力に定評がある丘でさえ、10曲を歌いきるためには猛練習が欠かせないという。

「少しでも時間が空いたら、カラオケボックスへ直行します。コンサートがある日も、昼公演が終わったら近くのカラオケボックスに行って、練習。会場に戻って夜公演をやり、帰宅したら家事をして子どもを寝かしつけ、夫に“あとはよろしくね”とカラオケボックスで数時間練習。少し寝たら起きて子どもに朝ごはんを食べさせてから仕事に行き……みたいな毎日が本番まで続きますね」

 そこまでするのは、達成できないとプロ歌手として悔しいという気持ちからなのだろうか?

「もちろん、それもあります。楽譜通りに機械のように歌って、視聴者の方に“丘みどりって、音は外さないけど心には響かないよね”と思ってはいただきたくないし、でも『鬼レンチャン』は達成したい。プロの演歌歌手としてのプライドと、正確に歌うことの狭間のところをいかにうまくできるかというのが、課題ですね。でもやっぱり、ずっと私を支えてくださっているファンの方に喜んでいただきたいというのが、一番の原動力です」

 彼女を支えているもうひとりが、3歳になる愛娘。

 今では自身が出演する歌番組を一緒に楽しむことができるようになったが、赤ちゃん時代は母親業と歌手業の両立に悩んだこともあったという。

「どちらも中途半端なんじゃないかと悩んでいたとき、上沼恵美子さんに相談したんです。“どうしたらお仕事と子育てを両立できますか?”って。そうしたら“両立なんかできないし、あなたの歌はあなたにしか歌えないんだから、一生懸命に歌いなさい。家族が協力してくれているんだったら、ありがとう、って言って、あなたはステージに立ちなさい”と言ってくださったんです」

 人生の先輩からの言葉は、張り詰めていた心と身体から余計な力を抜いてくれた。

「支えてくれる家族がいて、応援してくださるファンの皆さんがいてくれる。その幸せに感謝しながら、思い切り演歌を歌い続けていこうと心を決めました。今の大きな目標は、エンターテインメントの本場ラスベガス公演です。海外の方たちに、日本の演歌のかっこよさ、素晴らしさをお伝えしたいと思っています」

丘みどり(おか みどり)
1984年7月26日生まれ。兵庫県姫路市出身。11歳から数々の民謡コンクールで優勝。2002年にアイドルデビューするが、演歌歌手への夢を追い求めて2005年に『おけさ渡り鳥』で演歌歌手としてデビュー。2016年に第9回日本作曲家協会音楽祭「奨励賞」、第49回日本作詩大賞「優秀作品賞」を受賞し、2017年から3年連続でNHK紅白歌合戦に出場。2024年12月25日にオリジナル曲とカバー曲を収録したアルバム『JOURNEY』をリリース。

【作品情報】
舞台『おちか奮闘記』
2025年1月2日(木)〜26日(日)
三越劇場
作:川口松太郎(『浪花女』より)
補綴・演出:成瀬芳一 
出演:丘みどり
三田村邦彦、河合雪之丞、賀集利樹、松本慎也、瀬戸摩純 ほかhttps://mitsukoshi.mistore.jp/bunka/product/7050900000000000000002982412.html?rid=7b90e5db143c44a3a02acbf947dfdfa0

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