俳優復帰作でも夫婦役だった甲本雅裕
二人の子供が成長し、親元を離れ、少しバラバラになりかけている家族が”週末旅”を通して新たな関係性を築いていく。一家が向かう旅先は会津若松、黒部、熱海、函館、箱根……などよく知られた観光地で、そんな身近さも観る者に共感を与える一因となっている。石田さんが演じる山岡優子という母親は二人の子供を持つが、長女は就職し、長男は大学に通学、自身はパートとしてパン屋で働いていて、夫・義正との間にはどこか倦怠感が感じられる──という設定だ。
最近は「母親役が最も似合う」とネットでも評判ですが、と話を向けると石田さん自身も「そうなんですか!」と目を丸くして驚いた様子。その上で役について尋ねると
「ごくごく普通のお母さんだと思っています。でも、子供が小さい時には随分と過干渉だったところもあって、優子もそれではいけないと思っているし、親離れと子離れが絶対に必要だと思っているところは等身大のお母さんだと思いますね。私自身も娘が二人いてもう家を出ていますが、二人が日々何をしているか知りませんし、それで良いと思っています。でも、一方ではやはり淋しさも感じます。考え始めたら心配でしかないので、むしろ考えないようにしている……というのが正しいかもしれませんね。やっぱり巣立たせなければいけないとう葛藤は常にあるんです。そういう意味では共感することばかりですね」
夫・義正との”距離間“が演技のポイントとなってくる。
「すごく難しいですよね。旅が始まる前はギッスギスで会話も無いような、本当に険悪なムードなのに、徐々に仲を取り戻していく……というのが非常に判りやすいと思うんですけど、監督さんやプロデューサーさん、夫役の甲本(雅裕)さんとも“あんまりそういう風にはしたくないね”と話していて。本当に仲が悪かったら、やっぱり旅にはいかないと思うんです。旅に行ったから子供たちも含め仲良くなるというわけじゃないとも思いますし。だから、実際のお芝居でも監督さんからは“ちょっと距離間が近過ぎましたね”とか“ちょっと抑えて下さい”とか、逆に“もうちょっとテンション上げて下さい”って。そのさじ加減は甲本さんもとても大事にされていますね」
夫・義正を演じる甲本雅裕さんについて。
「甲本さんとは私の俳優復帰作の『弁護士のくず』(2006年)の一話だけのゲスト出演で夫婦役でご一緒させてもらっているんです。この時もあんまり仲のいい夫婦じゃなかったんですよ(笑)。でも、私たちって同じ仕事をするきょうだいの下という共通項があるんです。甲本さんはお兄様がミュージシャンの甲本ヒロトさん。一方的にですが、親近感を感じています」
第一話のサブタイトルが『家族の再開』であるが、“さいかい”の“かい”の字が”会う”ではなく”開く”となっているのが目を引く。
「完全に家族の関係が終わってしまったわけではないんですけど、新たな関係性を始めてみようかなっていうのが優子の気持ちだと思うんです。昔には戻れないし戻る必要もないし。でも、ちょっと疎遠になっていた。それを踏まえつつ、ここからまた始めよう……そんな意味が込められているのかなって思いましたね」
(つづく)
石田ひかり(いしだ・ひかり)
1972年5月25日、東京都生まれ。A型。T160㎝。1986年、ドラマで俳優デビュー。1987年、シングル『エメラルドの砂』でアイドル歌手としてデビューを果たす。1991年に公開された主演映画『ふたり』で「第34回ブルーリボン賞」をはじめとする多くの新人賞を受賞。以降、多くの映画やドラマを中心に活躍。最近作に『九十歳。何がめでたい』、『ブルーピリオド』などの映画や『あの子の子ども』、『全領域異常解決室』などのドラマがある。公開待機作に映画『366日』(2025年1月10日公開)がある。
【作品情報】
木ドラ 24「週末旅の極意 2〜家族って近くにいて遠いもの〜」
2025年1月9 日(木) 毎週木曜深夜24時30分〜25時00分 テレ東系にて放映
出演:石田ひかり、甲本雅裕、大原優乃、島村龍乃介
脚本:いとう菜のは
監督:青木達也、松本拓(テレビ東京)、⻆屋拓海
特別協力:ORIX HOTELS & RESORTS (オリックス・ホテルマネジメント(株))
🄫「週末旅の極意 2」製作委員会