1983年に放送されたドラマ『青が散る』(TBS系)で俳優デビューを果たしてから40年余りのキャリアを持つ石黒賢。90年代には誰もが夢中になったトレンディドラマ『振り返れば奴がいる』(93年・フジテレビ)で情熱派の外科医・石川玄を演じ、俳優としてのスタンスを確立させた。デビューから今日に至るまで実に様々な役をこなし、数々のドラマ、映画等に出演。来年還暦を迎えるが、現役として第一線で活躍し続ける石黒さんにとってのTHE CHANGEとは──。【第4回/全4回】

10代から俳優を生業としてきた石黒さんだったが、20代の後半に、ある監督に言われたことがその後の俳優人生に大きな影響を与えることになった。
「良い人というか二枚目半の頼りない、それも最後は恋愛においてはフラれてしまうような役を20代前半までずっと重ねてきていたんです。ある時、とある監督に“賢は『サイコ』のアンソニー・パーキンスみたいな役を演るべきだ”と言われたんです。“お前みたいなのが、ああいうのをやったら怖いぞ”って」
『サイコ』はサスペンスの巨匠といわれるアルフレッド・ヒッチコック監督が発表したスリラー映画の最高峰。ネタバレになってしまうがパーキンス扮する、一見気の弱そうな男が見せる真逆ともいえる狂気が観る者にショッキングな印象を与える作品だ。
「僕はそれまで自分からこういう役を演りたいですってアピールするのはすごく恥ずかしいことだと思っていました。でも、そう言われてからはプロデューサーに“『サイコ』のパーキンスみたいな役を演ってみたいんです”と、自分から言うようになって、段々と悪役とか、ちょっと変わった役のオファーがくるようになってきたんです。それで、実際に演じることになったら本当に面白かったんですよね」