初土俵(幕下付け出し)から“史上最速”となる所要13場所での横綱昇進を果たした大の里。昨年、「THE CHANGE」は大関昇進前にインタビューし、人生の転機をたっぷりと語ってもらった。30日に東京・明治神宮で行われた奉納土俵入りでは、公の場で初となる“雲竜型”の土俵入りを披露した。

初日を迎える前から、15日間チケット完売と人気を集めた大相撲夏場所の「目玉」は、大関・大の里の「綱取り」。
その期待に応えるように、大の里は初日(若元春)、2日目(高安)と、これまで苦手にしてきた相手を撃破すると、13連勝。綱取りの重圧もなんのその、13日目に4度目の優勝を決めた。
横綱昇進の基準は、2場所連続優勝あるいは、優勝に準ずる成績を上げること。春場所に引き続き、優勝を果たした大の里の次なる目標は、「全勝優勝」だ。
千秋楽結びの一番、豊昇龍ー大の里戦は、すでに優勝が決まっているとは思えないほどの盛り上がりを見せ、60本近くの懸賞金が掛かった。春場所に続いて横綱での初優勝を目指した豊昇龍は序盤で2敗し失速したため、優勝争いに加わることができなかった。しかし、この一番では「横綱の意地」を見せたい。
後方のマス席には、大の里の母・朋子さん、妹の葵さんも駆けつけた。結びの一番を前に、2人はマス席に正座し、手を組んで祈りながら、勝負の行方を見守った。
しかしーー。
勝利の女神は豊昇龍に微笑み、大の里の全勝優勝は叶わなかった。
5月28日、正式に第75代横綱に推挙された大の里は、ソワソワしながら、伝達を告げる使者を待った。
「謹んでお受けいたします。横綱の地位を汚さぬよう稽古に精進し、唯一無二の横綱を目指します」
堂々と口上を述べた大の里。当初、
「(好きな言葉の)『唯一無二』は大関昇進の時に使っちゃったから、別の言葉を考えたい」
と語っていた大の里だったが、「やっぱりこの言葉しかない」と「唯一無二」を口上に入れ込んだ。
「この言葉どおり、がんばろう」というシンプルながら力強い、大の里の決意が伝わる口上だった。
明治神宮での奉納土俵入りでは、体(192センチ、191キロ)を生かしたスケールの大きい雲竜型の土俵入りを見せた大の里。
まだ24歳。豊昇龍と共に「大豊時代」の幕は開いたばかりだ。
大の里(おおのさと)
二所ノ関部屋所属の力士(本名:中村 泰輝)平成12年6月7日生まれ。石川県河北郡津幡町出身。身長/192.0cm、体重/182.0kg
初土俵は令和五年五月場所、同年九月場所に新十両、令和六年一月場所で新入幕を果たす。同年3月場所に平幕で初優勝、そして9月場所では関脇として13勝2敗で優勝し、大関昇進。令和七年は三月場所で12勝3敗、五月場所を14勝1敗で2場所連続優勝。第75代横綱に昇進した。