8年ぶりの詩集出版に至るまで
「出版社はいくらでも待つって言ってくれたんで、“お願いします”って待っててもらって、それから4年経ってようやく出来上がって出せたんです。俺、自分の詩集を漫画雑誌を読むみたいに読んでほしくて、漫画雑誌って1冊の中にスポーツモノがあったり、戦闘モノがあったり、不良モノがあったり、Hなのがあったり、SFがあったり、ラブコメがあったり、いろいろなタイプの作品が一緒に載ってるじゃないですか。俺の詩集もそれと同じように、毎回、そんな感じをめざして作ってるんですが、うまいことバランスよくできればいいんですけど、そう簡単にはバランスよくならないんですよ。“あれ? 全部イケイケモノばかりでスポーツモノとかラブモノないやん”みたいになったりして、いつまで経ってもそれぞれのジャンルで数がバランスよくできなくて、それでさらに作ってたら、気付いたら気に入ってる詩が300詩以上になってしまって」
出版に至るまでの経緯を息継ぎする間もなく教えてくれる。最終的に「このまま出しましょうとなった」と、分厚さの理由を続ける。
「そんでもって、たとえば音楽のアルバムって曲順が考えられているじゃないですか。俺の場合は、それもいつも詩集でやっているんですが、それを今回は220詩でやってたら、それだけでも1年かかってしまった。もうパズルみたいになってきて、“ページ数的にコレがココに来るのはちょうどいいけど、この詩の前後はコレじゃないな”とか考え出すとえらいことになるんです。それに俺、パソコンもなにもできないし」
――えっ……!?
「あ、俺、原稿は全部手書きです。詩が出来上がる度に、とりあえず原稿用紙に下書きしておいて、それが10詩ぐらいたまったらそれをまた原稿用紙に清書して、編集部にはセブンイレブンからファックスで送るというのを繰り返しという感じです。セブンイレブンって一度に20枚までしか送れないんで、結構たいへんなんですけど。もしも、パソコンができたら詩の順番を入れ替えるのも簡単にできるんでしょうけど、俺、できないんで、原稿用紙をバインダーに挟んで順番を考えて入れ替えて。まあそんなことを延々とやりながらやっと順番が決まって、今回やっと出来上がったってわけです」

――果てしない作業ですね……。
「詩っていうジャンルって世の中で売れないじゃないですか。大きい本屋さんでも詩のコーナーって墓場みたいに誰も通らない場所にあったり。俺は詩集出すだけじゃなくて、それだけじゃラチあかんなと思うんで、もっとポップにならないとダメだと思っていて。なので、他にも俺はいろんな新しいアプローチをやっていて、たとえば俺はシングルカットと称して、自分の詩を詩集から選んで『ベアブリック』に入れて発表したりもしているんです。そうすることによって普段は本とか読まないやつが、『ベアブリック』というオモチャを通して俺の詩を読むことになる。ということは、ある意味それは、もう俺にとっては本であるという考え方です。『ベアブリック』に詩をプリントした時点で、それはもう俺にとっては詩集。朗読のCDも出したけど、どれもメジャーレコード会社から出したうえで、なおかつ普通の朗読会に出るよりも、フジロックとかライジングサンとかのフェスに出たりして。一切楽器も使わずに出るんです。自分の声のみで勝負する。で、ギタリストがピックを投げるみたいに俺は自分の詩集を、詩をひとつ読み終える度に観客に向かって投げるんです。詩の朗読のライブですが、まるでロックのコンサートのようになりますし、もちろん観客もオールスタンディングです」