詩集の帯文は中島みゆきさん以外には考えられなくて
そんな魚武さんだが、新刊発売を機にインスタグラムを開設。最新の投稿は新刊の書影で、帯のコメントを書いた「中島みゆき」という名前が際立つ。
「勇気を出して中島みゆきさんに、お忙しいとは知りながらもオファーしてみたんです。俺は、もともと中島みゆきさんが大好きだったんですが、もう随分昔に、みゆきさんに初めてお会いしたときに、みゆきさんが言って下さったんですが、なんと、みゆきさんも俺の詩集たちを読んでくださってたんです。“ちゃんと全部初版で持ってるのよ”って言って下さって、ものすごく感激したんですが、それで、今回の詩集を出すだんになって、帯文をどなたかにお願いしようと考えたときに、中島みゆきさん以外には考えられなくて、もし中島みゆきさんが書いてくれたら、どんなにうれしいことかと思い、それで勇気を出してオファーしてみたんです。
そしたら、こころよく快諾してくださり、帯文を書いてくださいました。帯を見ていただければ、わかりますが、縦書きなんです。よくある帯文って、たいてい横書きですよね。でも、みゆきさんが書いてくれた帯文は、縦書きで送られてきたんです。
なんてカッコイイんだと、帯文と、そしてそれが縦書きで書かれてあることに俺は、しびれました。早速、俺は装丁をしてくれるアートディレクターに連絡して、これは、ぜったい横にせず、帯を縦に長くしてもいいから、縦書きのままデザインしてほしいと頼んだぐらいホンマにシビレました。
あと、インスタグラムを開設したことに関しては、出版社の方に“詩集の告知を考えた時に、せめてインスタグラムだけでも、やっていただけると助かる”と頼まれたので、それをやる必要性を、俺はあまり理解できてはいないんだけど、だって、その時点までは、他人のインスタすら見たこともなかったというか、見方もわからないぐらいだったもんですから、さすがにインスタ映えという言葉は聞いたことはありましたけど……。インスタ映えって何やねん? だいたい、それの何が嬉しいねん? と不思議に思うぐらいだったんで。しかし、そこまで言うなら、やってみましょうか、という感じで始めてみました。というか人に世話になりながら、かろうじて現在やれているという感じです。
なので、これからもインスタを続けていけるのかは自信がありませんが、とりあえず、しばらくは、やってみようと思います」
――窪塚洋介さんも魚武さんファンを公言していますよね。
「彼のような表現者が、そういってくれるのは、ごっついうれしいですね。洋介は子どもの頃から俺の詩集を読んでくれてたらしいんですよ。俺がガキの頃に、漫画や音楽や、いろんな自伝や生きざまから、影響や刺激を受けて行動を起こしたわけで、それで今度は俺から影響を受けたと言ってくれる人がいてくれるというのは、すごいうれしいことで、さらにそいつの生きざまがカッコよかったら、なおうれしい」
ほかにも、桐谷健太さんなどと交流があり、それ以外にも「紅白で歌っていますみたいな人から、“1回会ってもらえませんか”みたいな連絡がある」というが、そこに嫌味は一切ない。
「だって、影響うけたおかげで、こうなれました! なんて言われたらめっちゃうれしいじゃないですか!」
無邪気な表情で話す魚武さんだからこそ、才能あふれる人たちが惹かれてしまうのだろう。
(つづく)
三代目魚武濱田成夫(さんだいめうおたけはまだしげお)
1963年、兵庫県西宮市生まれ。「自分を褒め讃える作品」しかつくらない詩人。1989年に『三代目魚武濱田成夫ー前代未聞の途中の自叙伝ー』、1992年に初詩集『駅の名前を全部言えるようなガキにだけは死んでもなりたくない』を上梓。これまでに22冊の詩集のほか、詩絵本や自伝、エッセイ、朗読CDや朗読ライブDVDなどもリリースしている。これまでの詩人にはない前代未聞の試みを行い、著名人にもファンが多い。最新詩集『誰かと同じで素晴らしいぐらいなら誰ともちがって素晴らしくないほうが千倍かっこええやんけ』(G.B.)を2月10日に発売。