前代未聞のパフォーマンスでフジロックに出演

 フジロックフェスティバルには2006年に出演、楽器を持たずに40分間朗読するという前代未聞のパフォーマンスで、並みいるアーティストのなかでも際立っていた。

――人の目を引く、ということを戦略的にやっているかと思いますが、最近はネット界隈の“炎上”で気を引く風潮があります。どう思いますか?

「俺、みんなと一緒みたいな戦略には興味がないんで。俺、オリジナリティないと嫌なんで。俺、YouTubeとかも自分では見たことがないんです。迷惑系YouTuberっていうのは聞いたことがあるけど、最近やっとスマホにしたばかりだし。検索の仕方とかローマ字変換とかもわからなくて。暗証番号もわからないから設定していなくて、だから俺のスマホは誰でも見放題状態。でもね、これがデジタル嫌いで“スマホを持たない!”みたいなこだわりだと言えたらかっこいいんですけど、俺はどっちかというと新しいもの好きなんです。だから、出来る人たちがうらやましい。ヒマが時間ができたら、アビバみたいなところに通ってみて、パソコン使えるようになってみたいし、そうなれたらオリジナリティのあることを考えついたりもしたいです」

――あえて“持たない”ではないんですね。

「スマホも持ってみたけど、操れない、という感じです。ガラケーのときはアドレス帳を持ち歩いてて、それを見ながら電話してたら、外でプッと笑われたぐらいですよ。それくらいできないヤツなんです。でも、そういうものに対して憧れはあるから、アップルの人が俺のファンだと言ってくれて、コラボTシャツを作ったりアップルストアで朗読イベントをやったりしたときは、めっちゃうれしかったぐらいです」

 赤裸々に、素直に、わからないことや憧れを堂々と語る魚武さんからは、すでに、近寄りがたいというパブリックイメージは消えいた。

「あとね、これも恥ずかしい話なんですけど、俺、スマホとの関係がうまくいってなくて。スマホと家庭内別居状態なんです。近くに置かず、窓側に置いたまま家の中でもスマホと離れて暮らしてる。前に東京に来たときは、家に置いてきて、スマホなしで8日間くらい平気ですごしてました」

――電車に乗るとほとんどの人がスマホに目を落としていますが、その光景はどう思いますか?

「老若男女がみんな見ているから“おまえら大丈夫か?”と思うんですけど、そこでハッするんですよ、“逆に俺が大丈夫か?”と。でも、それってデジタルできひん自分のやっかみなんじゃないのかなって。うちはスマホとの関係がうまくいってないからかもって。だから情弱やし、あと『ネットフリックス』とか『ディズニーチェンネル』でしか見られないものがあるんやって聞くと、すっごく羨ましい」