インパクトのある作風と出で立ちで、90年代カルチャーシーンでひと際異彩を放った詩人・三代目魚武濱田成夫さん。その存在感はいまも揺らぐことなく、今年1月には8年ぶりに最新詩集を上梓した。すれ違う人の目を根こそぎ奪っていくという、かつてない撮影中に聞いた、魚武さんのTHE CHANGEとは。【第3回/全3回】

三代目魚武濱田成夫 撮影/有坂政晴

 西日がカメラマンの背中を色濃く染めるが、レンズの先に立つ、詩人・三代目魚武濱田成夫さんは一切染まらない。強烈な詩戦闘コート(※本人の詩や絵などが刺繍やペインティングされた自作のコート)が、飲み込んでしまうからだ。とにかく目立つ。撮影していると、誰もが魚武さんを、二度、見る。

「その服装、おまえ頭大丈夫か?って感じよな」 

 魚武さんが自身に対して笑いながら言う。真意がわからず返答に困っていると、こう続ける。

「昔は、この格好で電車にも乗っていたんですよ。これね、詩が入ってる部分とか神戸の刺繍屋のおっちゃんに刺繍してもらってるんです。昔は(暴走)族もいて、特攻服を作ってもらいにくるんです。ほんなら、俺が店で服を作ってもらっている間におっちゃんが、“兄ちゃんも単車かい?”と聞くんです。“いやいや、俺は歩くんです。それに俺は1人です”と言うと、“え! あ、歩く……!? ”って」

 高校を卒業したばかりの頃、魚武さんはこの自作の詩や絵を入れた服を着て大阪の繁華街を練り歩いていた。

「近所の商店街でも知られていて、俺が毎日のように、この格好で出かけるから、ある日、おかんに“頼むからその格好で出ていくのをやめてくれ”って言われたことがあって。それでも出て行こうとしたら泣きながら足掴まれて“頼むからやめてーー!! ”って。それでも俺は“うっさいほっとけ!”って言うて、その手を足でふりはらって出かけてました」