テレビドラマ史に残る学園ドラマの名作『3年B組金八先生』シリーズ。その第2シリーズ(80年)で物語のキーパーソンとなる生徒の一人、椎野一を演じたひかる一平。本作の出演をきっかけにタレントとして大いな飛躍を遂げた。しかし、現在では芸能界の表舞台から一線を退いている。ひかるさんに何があったのか──。【第1回/全3回】

ひかる一平 撮影/有坂政晴

 『3年B組金八先生 第2シリーズ』は1980~81年に放送され、当時の社会問題にもなっていた中学生の校内暴力やいじめにスポットを当てた作品だった。中でも印象的なのは元番長・加藤優(直江喜一)の「俺は腐ったミカンじゃねぇ!」というセリフは本ドラマのキー(腐ったミカンの方程式)を表す象徴的なセリフで、今日このドラマを懐古する時には必ず出てくるほど。そんな第2シリーズに登場した椎野はどこか幼さの残る美少年で「ぼく、加藤君が好きだ」というセリフと共にドラマのファンの胸に残っている。

 そんな椎野を演じたひかるさんが43年振りに学生服を纏い、主人公の現役高校生・椎名一平に扮した話題作『還暦高校生』は、『いかレスラー』や『日本以外全部沈没』などのおバカ映画の巨匠とも言われる河崎実監督の最新作だ。42回ダブって還暦を迎えた椎名の活躍を描く青春(還暦?)グラフィティである。

 この日は劇中で使用した制服に身を包んで取材に応じてくれたひかるさんに作品のオファーを聞かされた時の第一印象を尋ねると「冗談かなと思いましたね」と笑いながら答えてくれた。

「いままでもそんな話や企画はいいただいたことがあったんですけど、だいたい流れることが多かったんです。ただ、僕自身も60歳を越えてこれまで一生懸命やってきた結果としてこういう話が来たのかなと思い、実際に河崎監督にお会いしてお話をさせてもらいました。そうしたらとても面白い方で、和やかな感じで出来そうだなって思い引き受けました」