「高校生じゃん、俺」と脳に思い込ませた

 そして台本を読んだが──

「正直、よく判らなかったです(笑)。文字だけを拾っていっても画が浮かばないというか、どうなっているのっていう想像が付きませんでした」

 演じた椎名一平は高校3年生を42回もダブり還暦を迎えたという設定だ。

「演じる上でなりきろうということはありませんでした。ただ、脳を騙くらかす……とでもいうんでしょうか。脳を上手く変えてあげれば、色んな自分になりきれるんだと思うんです。今回、衣装は制服でしたが、最初は“これ着るの?”って(笑)抵抗がありましたよ。でも、いざ着てみて、その姿を鏡で見ないようにして“高校生じゃん、俺”って脳に思い込ませたら演じる気も出てきましたし、元気にもなりましたし、当時のことを思い出したりもできました」

 カメラの前に立つのは18年に放映されたドラマ『アンナチュラル』(第3話)のゲスト出演以来で、約7年振りだった。

「特に緊張とかはなかったですしリラックスして臨めました。それだけ図々しくなったことなんでしょうか(笑)。『アンナチュラル』の時は緊張感ありましたね。以前から付き合いのあったプロデューサーからの誘いで出させてもらったんですが、石原(さとみ)さんを中心にしたチームが既に出来上がっていてたので重圧というか、そういう空気感があったんです。今回の現場は河崎監督が最初に現場をコミュニケーションを取った上で明るくしてくれたのでとてもリラックスした状態でした。何時間もかけて同じシーンを繰り返していると、演じる側としては新鮮さがなくなったりもするんですけど、監督はとても速いテンポで、そんな感じもなかったです」

 今回は「金八」で共演した加藤優役の直江喜一さんとも約44年振りに一緒にカメラの前に立った(直江さんの役は椎名の同級生で現在は設備会社の部長・伊藤役)。