まずは自分の体で覚えろって
その後、雑貨屋、服屋、古物商……転々と、色んな仕事に就いた。ただ、どの仕事も人任せでひかるさんはオーナーというポジションに就いていた。
「それ(オーナー)がいけなかったんです。ある時、知り合いの不動産屋の社長から“ハウスクリーニングの仕事があるけどやるか?”って誘われたんですよ。そこは学生街だからクリーニングの対象はいっぱいあるからって。それで“判りました”と、人を集めようと思ったんです。そうしたら、それをやるには先ずは自分の体で覚えろって言われたんです。お前が出来なかったら誰にも教えられないじゃないかって。メンバーの誰かが怪我して出来なくなったら誰が代わりにやるの? 責任を持って仕事はしなきゃいけない、と」

その後、ひかるさん自らがハウスクリーニングを行った。
「その一年後ぐらいに、ハウスクリーニングの会社の社長から“そろそろ責任を持てるだろう”と言われ、7、8人ぐらいを雇って会社を始めました。学生の部屋といっても何百軒もあったので、みんなに教え手分けして。でも、それも長くは続かなくて、3年ぐらいで辞めてしまいましたね」
次に始めたのは子役の指導だった。
「30歳ぐらいの時から、三つ年下の後輩が子役事務所を立ち上げるから講師をやらないかって誘いを受けていました。でも、その頃はまだプレイヤーとして現役だったので断ったんです。そもそも教える技術はないし、そんなの無理無理って。それでも、ずっと誘われ続けていたので、40歳になったタイミングで一回やってみようかなと思って始めたんです。それで3か月ほどやってみたんですが、やっぱり合わないから辞めるって話しました。そうしたら、“今度3日間の合宿があるから、そこに来てみてよ”って誘われたんです。で、その合宿に行ってみたら、ハマっちゃったんです。最初に3か月手伝っていた時の生徒たちは一いったら一しか返ってこなかったんですが、合宿に集まった子たちは違いました。小学1年生ぐらいから中学2年生ぐらいまでの選ばれた子どもたちで、一言うと三つから五つぐらい返ってきたんです。そんな彼らの熱さ、真剣な眼差しに感動したと同時に面白さを感じ、愛情を感じて、“子供って面白い”と思い始めて、本気でやろうと思えたんです」