中途半端な姿勢じゃダメだ
その後、約10年間その子役事務所で指導を続け、48歳の時に現在の芸能プロダクションを立ち上げることになった。
「僕は子供たちを人として扱いたいって思ったんです。当たり前の話なんですけど、子役事務所というのは、タレント曰く商品って思いがちなところがあるんです。事務所なので当たり前なのですが、僕の経験上これまで人間としては未熟なまま、売れると鼻高々になって、いつの間にかいなくなってしまう人をいっぱい見てきました。だから、先ずは人として育てたいという思いがあり、コミュニケーション学を教えていこうと専門の大学教授にも協力してもらい『人間学』も教えているんです」

スタート当初、局回りをした時の話だ。
「知り合いのプロデューサーに挨拶に行った時に、絶対何かしてくれるだろうと思って“どうもお願いしま~す”という感じの軽いノリで話をしたら怒られたんです。俳優としてはベテランでしょうけど、会社を立ち上げた人としては新人でしょ。そんな人がこんなやり方で良いと思ってるのって。甘かったですよね。自分は表舞台に立っているんだっていうプライドがあったからそんな態度だったんでしょうけど、所属者たちのためを思ったらそんな中途半端な姿勢じゃダメだと思いを改めました。プライドは捨てて表舞台から引っ込まなきゃと思うようになったんです。それからは人様に頭を下げることも全然苦にならなくなったんです」
スタート当初は8人だった所属者も今では100名ほどになった。
「自分が何とかここまでやってこれたのは多くの人に助けてもらったからです。お陰様でいまは仕事もお金も回ってきていますけど、その回ってきたものを今度はこれまで支えて応援してくれた人たちに還元していくのが筋だと思っているんです。恩返しですね。結果として、皆さんで笑顔になるのが僕にとっての一番の理想なので」
様々な仕事に就き、多くの人たちとの出会いがひかるさんに人として大きな変化を与えたようだ。今後、ひかるさんの思いを引き継ぐ次世代の俳優たちが、これから演技の世界をどのように変えていくのか──それを一番期待しているのはひかるさん自身である。
ひかる一平(ひかる・いっぺい)
1964年5月11日、東京都生まれ。O型。1980年、ドラマ『3年B組金八先生』第2シリーズで俳優デビュー。翌年には『青空オンリー・ユー』で歌手デビューを果たす。以降、『必殺仕事人』シリーズ(Ⅲ~Ⅳ)、NHK大河『武田信玄』(88年)、『水戸黄門』シリーズなどのドラマや、『必殺!THE HISSATSU』(81年)、『胸騒ぎの放課後』(82年)などの映画に出演。現在は俳優業と一線を画し、芸能プロダクション「株式会社スカイアイ・プロデュース」の代表取締役社長と東邦音楽大学講師を務めている。
映画『還暦高校生』
出演:ひかる一平 直江喜一 石田泰誠 戸苅ニコル沙羅 森井信好 長谷摩美 笑福亭鶴光 古谷敏
脚本:小野峻志 河崎実
監督:河崎実
6月27日(金)より東京・池袋HUMAXシネマズ、ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国ロードショー
配給:株式会社フリック
(c)ロングキャニオン2025
公式サイト: https://kanreki-movie.com/