「人によって、いろんな幸せがある…美味しいものを食べたり、海外旅行したりとか、僕は“歌ってないとダメ”」

「僕は、(歌という)めちゃめちゃ好きな子に会いに行く途中で蹴られたりもしたし、ツバを吐かれたり、あとは、投げ銭でいただいた1万円を別の人が持って行っちゃったなんてこともありました。
 ほかにも、土砂降りの雨が降ってきたり、雪が降って手がかじかんでうまく弾けない、ギターの弦が4本も切れて2本しかないのに気づかずに歌っていた……みたいなエピソードは、いくらでもあります。


高橋優 撮影/冨田望

 でも、辞めなかったのは、ずっと片思いだからなんですよね。その子にきっぱりと振られたとか、決定的な何かがあれば辞められると思うんです。これ本当に皮肉っぽい話なんですけど、“辞められたら、むしろ楽”なんです。路上で歌わなくて済むし、歌うために曲を書かなくてもいい。楽ができます。
 人によって、いろんな幸せがある……たとえば、美味しいものを食べたり、海外旅行したりとか、と思うけど、僕は“歌ってないとダメ”。ある種の『呪い』をかけられちゃったみたいなものなんです」

“呪い”とは、なかなかインパクトのある言葉だが、それくらい切迫した思いで歌っていたに違いない。