伝説の深夜番組『平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国』(1989年2月11日~90年12月29日/TBS系)、通称「イカ天」は空前のバンドブームを巻き起こした。毎週土曜の深夜1時~3時という時間帯にもかかわらず、最高視聴率は7.8%という、いまでは考えられない驚異的な数字をたたき出した。
その第3代グランドイカ天キング「たま」。ランニングシャツ姿でパーカッションを演奏した石川浩司は、バンドだけでなくイカ天ブームそのものを象徴する存在だった。
バンド解散から20年。ミュージシャン石川浩司の「THE CHANGE」とはーー。
【第4回/全5回】
「僕が一番最初に個人名義で出した本はインスタントラーメンの図鑑でした」
緑色のTシャツ姿で「THE CHANGE」の取材に応える石川さん。バンド「たま」のパーカッション担当として、伝説の深夜番組『イカ天』出演から鮮烈なデビューを飾り、紅白歌合戦にも出場したミュージシャンだ。そして、稀代のコレクターとしても知られている。
「上京してきたときにアパートで貧乏暮らしだったんですけども、貧乏でも何か集められるものはないかなと思っていたんです。そしたら、“そうだ!食べているインスタントラーメンの袋とか飲んでいるジュースの缶を集めたら面白いんじゃないか”と思って……。
一人暮らしのときは、毎日1食、時には3食ラーメンを食べてました。だから、“1日1食は必ず食べる”と自分の中で掟を作って、毎日違う商品の袋麺やカップ麺を食べて、それをスクラップブックに貼るというのをやりはじめて、日記も添えるようになったんです。僕はとにかく一旦楽しいなってことを始めるとやめないんですよ。結婚してからはさすがに毎日は食わないから数は減りましたけどね」
石川さんは結婚した後、1989年に「イカ天」出演、翌年『さよなら人類』でメジャーデビューを果たした。結婚するまでに書き溜めた「麺日記」は18冊にもなったという。売れない頃から集めていたインスタントラーメンの袋は、最終的にはどのくらいの数になったのだろうか。
「最終的にというのはないんです。いまも集めているので(笑)。本を出したのはデビューの頃だから、もう30年くらい前になります。そのときに800くらいだったかな。いまは、たぶん2000は超えてると思います」
2000以上!? インスタント麺にそれだけの種類があることにも驚くが、一度始めたら興味がある限りやめないというその継続力に感服する。
ジュースの空き缶コレクションは3万個!
石川さんが『イラスト図鑑 インスタントラーメン』(同文書院)を上梓したのはデビューから5年後の1995年のこと。それから更に20年以上経った2019年、今度は『懐かしの空き缶大図鑑 石川浩司のお宝コレクション』(東海教育研究所)を上梓する。
「缶ジュースは、アマチュアの頃に地方ツアーで和歌山に行った時、自販機で掛布さんのオリジナルドリンクを発見したのがきっかけです。東京には売っていない関西ならではのものに衝撃を受けて、コレクター魂に火がつきました。
始めた頃は地方だけの中小メーカーがいっぱいあったんですよ。だからすごい面白かったんですけど、もう軒並み潰れちゃって。今はもう地方に行っても大手の、それこそ東京にもあるものと変わらないことが多いから、面白味がだいぶ減りましたけどね。
それでも地方に行くと、やっぱりスーパーで自分が初めて見るものとかは絶対集めちゃうんです。ただ、被っちゃったりとか、たまには間違えてってのはありますよ。コーヒーとかデザインが似てるのがあって、微糖とブラックでちょっとだけ色が違うとか。これブラックだと思って買ったけど微糖だったか……、みたいな(笑)」
そうして集めた空き缶はなんと3万個を超えるという。ラーメンにしてもジュースにしても自分で食べたり飲んだりしたものだけを集めるのが石川さんのマイルール、つまり中身はすべて体内に取り込まれたているのだ。